不動産取得税 — 不動産を手に入れた人が一度だけ払う地方税

この章の主張

  • 不動産取得税は『取得した者』に課税される地方税で、登記の有無は関係ない。
  • 課税標準は固定資産税評価額で、住宅・宅地には大きな軽減特例がある。
  • 税率は本則4%、住宅と土地は当面3%。さらに住宅用土地は税額から直接減額できる。
不動産取得税の3要素分解図

1. 納税義務者と課税対象 — 誰が、何を取得したら課税されるか

不動産取得税は地方税法第73条の2第1項で「不動産の取得に対し、当該不動産所在の都道府県において、当該不動産の取得者に課する」と定められた地方税です。納税義務者は取得者、課税対象は土地と家屋、課税権者は都道府県という3点を最初に押さえます。

地方税法 第73条の2第1項: 「不動産取得税は、不動産の取得に対し、当該不動産所在の都道府県において、当該不動産の取得者に課する」(→ e-Gov 地方税法

登記を備えなくても課税される点が、不動産登記法の論点と混同しやすいところです。

1.1 課税団体と納税義務者 — 都道府県が取得者に課税する

課税団体と納税義務者のフロー

課税団体は不動産の所在地の都道府県です。納税義務者は取得者で、個人でも法人でも、国内に住所がない非居住者でも納税義務を負います。

有償取得(売買)と無償取得(贈与)はどちらも課税対象です。「お金を払っていないから課税されない」という誤解が頻出ですが、贈与による取得も売買と同じく不動産取得税の対象です。

1.2 『取得』に含まれるもの・含まれないもの — 形式的承継は非課税

課税される取得と課税されない取得の左右比較

地方税法第73条の7は「形式的な所有権の移転」を非課税としています。実質的に新しく所有権を得たかどうかで課税の有無が分かれます。

課税される取得課税されない取得(形式的承継)
売買相続
交換包括遺贈
贈与相続人に対する特定遺贈
新築(請負・自建)法人の合併・分割による承継
増築・改築共有物分割で持分を超えない部分
相続人以外への特定遺贈

2. 課税標準 — 固定資産税評価額を出発点に、特例で減らす

課税標準の特例ツリー

課税標準は固定資産課税台帳に登録された価格、いわゆる固定資産税評価額です(地方税法第73条の13)。売買代金や時価ではない点が重要です。

その評価額を出発点に、新築住宅は1,200万円控除、既存住宅は築年に応じた控除、宅地は2分の1の各特例で大きく減額されます。家屋の控除と宅地の2分の1は別制度なので、同じ取引の中で両方を併用できます。

2.1 原則 — 固定資産税評価額のみを使う

取得価格・時価・固定資産税評価額の3者比較

不動産には取得価格(売買代金)時価(鑑定評価額)固定資産税評価額という3つの価格が登場しますが、不動産取得税の課税標準として使うのは固定資産税評価額のみです。

固定資産税評価額は固定資産課税台帳に登録された価格で、3年に1度の評価替えで決まります。一般に時価のおよそ7割が目安とされ、売買代金より低い額になることが多いです。「実際に1億円で買ったから1億円が課税標準になる」というのは誤りです。

2.2 新築住宅の課税標準特例(1,200万円控除)

新築住宅の3要件と1,200万円控除の効果

地方税法第73条の14第1項で、新築住宅は評価額から1,200万円を控除できます。要件は3つです。

  • 床面積が50㎡以上240㎡以下(戸建ても共同住宅も同じ)
  • 住宅として新築であること(建売の未使用取得も含む)
  • 用途は住宅であればよい。自己居住要件はなく、貸家でも適用可能

共同住宅は各独立部分(1戸単位)で要件を判定し、1,200万円控除も1戸あたりで計算します。床面積240㎡を1㎡でも超えると控除が一切使えなくなる点は要注意です。

2.3 宅地の課税標準特例(2分の1)

宅地の課税標準を2分の1にするフロー

宅地および宅地評価された土地(市街化区域内農地等)は、課税標準を評価額の2分の1にします(地方税法附則第11条の5)。期限延長を繰り返している軽減措置です。

3. 税率と免税点 — 住宅・土地は3%、商業用家屋は4%

税率早見表(住宅・土地3%、住宅以外の家屋4%)

地方税法第73条の15の本則税率は4%ですが、地方税法附則第11条の2で、住宅と土地については当面3%の軽減税率が適用されています。住宅以外の家屋(事務所・店舗・倉庫・工場など)だけは本則どおり4%です。

さらに、課税標準が一定額に満たない取得については、税額を計算する前に課税自体が消える「免税点」制度があります。

3.1 標準税率と軽減税率 — 4%と3%の振り分け

税率の3区分(本則4%・住宅家屋3%・土地3%)

税率は次の3区分です。

区分税率根拠条文
本則税率4%地方税法 第73条の15
住宅家屋(軽減)3%地方税法附則 第11条の2
土地(軽減)3%地方税法附則 第11条の2

住宅以外の家屋は本則の4%のままで軽減対象になりません。事務所ビルや店舗を取得した場合は4%で計算します。

3.2 免税点 — 課税されない最低ライン

免税点早見表(土地16万円・新築66万円・既存34万円)

地方税法第73条の15の2は、課税標準が次の額に満たないとき不動産取得税を課税しないと定めます。本教材の基準日 2026 年 4 月 1 日(令和 8 年 4 月 1 日) 以降の取得は次の金額が適用されます。

取得対象免税点(課税標準)
土地16 万円未満
新築または増築・改築の家屋66 万円未満
既存(中古)の家屋34 万円未満

令和 8 年 3 月 31 日以前の取得は旧基準(土地 10 万円・新築 23 万円・既存 12 万円)が残るため、過去問の解説と照合するときは取得時期に注意してください。

比較するのは課税標準である点が重要です。1,200万円控除や宅地の2分の1の特例を適用した後の金額で免税点と比べます。

4. 住宅用土地の減額特例 — 住宅と一緒に取得した土地はさらに減額

住宅用土地の減額判定フロー

住宅とセットで取得した土地(住宅用土地)は、税額から直接減額されます。課税標準の特例とは別で、控除する金額の入口が違う点に注意してください。地方税法附則第11条の4第4項が根拠です。

減額額は45,000円と「土地1㎡あたり評価額 × 床面積の2倍(200㎡上限)× 3%」のいずれか大きい方になります。

4.1 住宅用土地の要件 — 取得時期と床面積

土地と住宅の取得時期のタイムライン

住宅用土地の減額を受けるには、土地と住宅の取得時期が一定期間内に収まる必要があります。地方税法施行令附則第6条で次の3パターンが定められています。

パターン順序期間
① 土地 → 新築住宅土地が先3年以内に新築取得
② 土地 → 既存住宅土地が先1年以内に中古取得
③ 住宅 → 土地住宅が先1年以内に底地取得

加えて、住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下であることが要件です。新築住宅の課税標準特例と同じ床面積要件と覚えると整理しやすいです。

4.2 減額計算 — 45,000円と床面積基準のいずれか大きい方

住宅用土地の減額計算の3要素分解

減額計算は次の2つを並べて、大きい方を税額から控除します。

  • A 定額: 45,000円(小規模住宅地の最低保障)
  • B 床面積基準: 土地1㎡あたり評価額 × 床面積の2倍(200㎡上限)× 3%

Bの『床面積の2倍』は1戸につき200㎡を上限とします。床面積240㎡の住宅でも、減額計算上は200㎡で頭打ちです。広い住宅ほど無条件にBが大きくなるわけではない点が引っかけです。

5. 申告と徴収 — 普通徴収で都道府県から納税通知書が届く

申告から納付までのフロー

不動産取得税は普通徴収方式です。取得者は条例で定める期間内に都道府県へ申告し(地方税法第73条の18)、都道府県が税額を計算したうえで納税通知書を送付します。納税通知書に記載された納期限までに納付すれば手続きは終わりです。

納税通知書は取得から数か月〜半年遅れて届くのが通常で、登記後しばらく経って忘れた頃にやってきます。

5.1 徴収方法 — 普通徴収と申告納税の違い

普通徴収と申告納税の左右比較

地方税の徴収方法は、税額を計算するのが誰かで2つに分かれます。

徴収方法計算する人該当税目
普通徴収課税庁(都道府県・市町村)不動産取得税・固定資産税・自動車税
申告納税納税者本人所得税・贈与税・相続税・法人税

普通徴収では本人は申告を出すだけで、税額計算は都道府県側が行います。申告納税では本人が計算から申告まで両方担当します。

このカテゴリから出る過去問

このカテゴリの過去問は、公式由来確認済みの問題に絞って次の年度を中心に出題されています。Phase 3 で /takken/quiz/{year}/{q-number}/ に個別解説を整備予定です。

  • 令和5年度試験 問23 — 不動産取得税の納税義務者・課税標準
  • 令和4年度試験 問24 — 不動産取得税の税率と特例
  • 令和3年度10月試験 問24 — 課税標準と免税点
  • 令和2年度10月試験 問24 — 住宅取得時の課税標準特例
  • 令和元年度試験 問24 — 普通徴収と申告

上記は出典確認済の例示です。公式問題文・正答は → 不動産適正取引推進機構(RETIO) 公表の本試験結果に基づきます。

参照条文

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3_2 固定資産税 — 同じく地方税で、課税標準が『固定資産税評価額』である固定資産税に進みます。両税の対比で評価額の理解が深まります。

本教材は 令和8年度(2026年度)宅地建物取引士資格試験 を対象として、2026 年 4 月 1 日時点で施行されている法令 に基づき執筆しています。法改正は /takken/changelog/ に掲載します。