報酬 — 宅建業者が受け取れる金額の上限ルール
この章の主張
- 報酬の上限は法令と国土交通省告示で決まっており、業者は1円も超過受領できません。
- 売買・交換は3段階の速算表、貸借は1ヶ月分の上限で計算します。
- 報酬以外の名目で金銭を受け取れるのは、依頼者の特別の依頼による実費だけです。
1. 売買・交換報酬の上限 — 3段階速算表で一発計算する
業法第46条第1項は、宅建業者が受領できる報酬の額を国土交通大臣の定めるところによる旨を規定し、告示(昭和45年建設省告示第1552号、最終改正令和6年)が具体的な計算式を置きます。媒介報酬は依頼者の一方から受領できる金額が代金額に応じて3段階で決まります。
業法第46条第1項: 「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる」(e-Gov 業法第46条)
| 代金額(税抜) | 報酬率 | 速算式 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 5% | 代金 × 5% |
| 200万円超〜400万円以下 | 4% | 代金 × 4% + 2万円 |
| 400万円超 | 3% | 代金 × 3% + 6万円 |
例えば代金1,000万円の媒介なら、1,000万円 × 3% + 6万円 = 36万円(税抜)が依頼者一方からの上限です。買主・売主の双方から媒介を受託していれば、それぞれから36万円ずつ受領できます。
1.1 代理は媒介の2倍 — 双方合計でも媒介2倍まで
代理を受託したときは、依頼者の一方から速算表の額の2倍まで受領できます。ただし依頼者と相手方の双方から代理・媒介で受領する場合の合計額も、速算表の2倍が天井です。
つまり、代金1,000万円の取引なら、媒介でも代理でも、業者が双方から受け取れる合計は最大72万円までになります。
1.2 消費税の扱い — 税抜代金から計算して報酬に消費税を上乗せ
速算表に入れる代金は税抜価格です。土地は非課税、建物部分には消費税がかかります。算出した税抜の報酬額に、課税業者なら10%の消費税を加えて請求します。
例えば建物2,200万円(税込)・土地3,000万円の物件なら、税抜代金は建物2,000万円+土地3,000万円=5,000万円。報酬は5,000万円 × 3% + 6万円 = 156万円、税込なら171.6万円が上限です。
免税事業者の場合は、報酬本体に消費税分の上乗せはできませんが、仕入れに含まれる消費税相当として4%相当まで上乗せが認められています(報酬告示第7の解釈通知)。
2. 貸借の報酬上限 — 賃料1ヶ月分、居住用は片側0.5ヶ月が原則
貸借の媒介報酬は、業者が双方合計で借賃1ヶ月分を超えて受領できないのが原則です(報酬告示第4)。居住用建物については、依頼者の一方から原則借賃の0.5ヶ月分まで、依頼を受けるにあたってあらかじめ依頼者の承諾を得た場合に限り1ヶ月分まで受領できます。
| 用途 | 一方からの上限 | 双方合計の上限 |
|---|---|---|
| 居住用建物 | 原則0.5ヶ月/承諾あれば1ヶ月 | 1ヶ月 |
| 居住用以外(事務所・店舗等) | 制限なし | 1ヶ月 |
借賃8万円の居住用建物の媒介で借主から承諾を得ていない場合、業者は借主から最大4.4万円(8万円 × 0.5 × 1.1)までしか受領できません。事務所として貸借するなら、貸主から8.8万円・借主から8.8万円という配分は違反で、双方合計が8.8万円を超えてはいけません。
2.1 権利金がある場合 — 居住用以外は売買とみなして計算可
居住用建物以外の貸借で、権利金(返還されない権利設定の対価)の授受がある場合は、権利金の額を売買代金とみなして売買報酬の計算式を適用できます(報酬告示第6)。借賃1ヶ月分の計算結果と比較し、業者は有利な方を選択できます。
例えば事務所の貸借で借賃20万円・権利金200万円なら、借賃ベースは1ヶ月20万円。権利金ベースは200万円 × 5% = 10万円。借賃ベースの20万円が大きいので、業者は双方合計で最大20万円まで受領可能です。
居住用建物の貸借では、権利金があってもこの売買みなし計算は使えません。
3. 低廉な空き家等の特例 — 800万円以下は30万円上限(2024年7月改正)
代金額が低い空き家等を通常の速算表で計算すると、報酬が少額となり、現地調査費用を回収できません。そこで報酬告示に低廉な物件の売買等についての特例が置かれています。
2024年7月1日施行の告示改正で、対象が「代金400万円以下・上限18万円(税抜)」から「代金800万円以下・上限30万円(税抜)」に拡張されました(令和6年6月21日国土交通省告示)。
| 区分 | 旧特例(〜2024年6月) | 新特例(2024年7月〜) |
|---|---|---|
| 適用代金額 | 400万円以下の宅地・建物 | 800万円以下の宅地・建物 |
| 報酬上限 | 18万円(税抜) | 30万円(税抜) |
| 対象業者 | 売主側の媒介・代理を受託する業者 | 売主側の媒介・代理を受託する業者 |
買主側を媒介・代理する業者には特例の適用がありません。買主側は通常の速算表に従います。
3.1 適用要件 — 売主側・低廉物件・事前合意の3つ
特例の適用には3要件をすべて満たす必要があります。
- 売主側媒介・代理: 売主から媒介・代理を依頼された業者であること
- 低廉物件: 代金額が800万円以下の宅地・建物であること
- 事前合意: 通常の媒介業務に加え現地調査等の費用を要する旨を、媒介契約の締結に際してあらかじめ依頼者に説明し合意していること
合意を得ずに特例分の報酬を受領すると、通常の速算表を超える部分は超過受領となり、業法第46条第2項違反です。事前合意は媒介契約書に明記して証拠化します。
4. 受領できる金銭の範囲と禁止行為 — 報酬以外は原則受領不可
業法第46条第2項は、宅建業者が告示で定める額を超えて報酬を受領してはならない旨を定めます。さらに第3項は、報酬以外の名目での金銭授受も原則として禁止します。
例外として認められるのは、依頼者の特別の依頼による広告料等の実費に限られます(報酬告示第9)。具体的には次の通りです。
- 可(実費): 依頼者が指定した媒体への有料広告掲載料、依頼者が要請した遠隔地での現地調査の交通費
- 不可(業務範囲内): 通常の媒介業務に伴う広告料、契約書作成費、案内に要した一般的な交通費
業者の判断で行った通常の広告については、たとえ依頼者から「広告費として」と差し出されても請求も受領もできません。報酬告示第9で「依頼者の特別の依頼により支出を要する特別の費用に相当する額」と限定されているためです。
4.1 違反時の処分 — 指示・業務停止・免許取消へ
報酬上限違反は業法第65条以下の監督処分の対象です。免許権者は、業者に対して指示処分(業法第65条第1項)、1年以内の業務停止処分(業法第65条第2項)を命じることができます。情状が特に重い場合は業法第66条第1項第9号により必要的免許取消となります。
加えて、業法第82条第2号は報酬制限違反に対して100万円以下の罰金を定め、両罰規定(業法第84条)で法人にも罰金が科されます。
報酬を受領できる時期は、契約成立後の媒介・代理であれば請求可能ですが、契約が成立しなければ報酬は発生しません。媒介契約書には報酬の額・支払時期を明記して、トラブルを防ぐ必要があります。
このカテゴリから出る過去問(公式由来確認済の問題)
- 令和3年12月試験 問31(exam_id=21-2 q31、誤っているものはいくつあるか)— 論点: 居住用建物の0.5ヶ月制限と承諾、事務所貸借の双方合計上限、権利金の売買みなし計算、依頼によらない通常広告料の受領可否。出典: 一般財団法人 不動産適正取引推進機構(→ RETIO 試験情報)
- 令和5年度試験 問34(exam_id=23 q34、宅建業法の規定に違反するものはいくつあるか)— 論点: 居住用建物の0.5ヶ月制限と承諾、特別な広告依頼に基づく実費請求、契約書作成費の請求可否、事務所貸借の上限。出典: 同上
本カテゴリの過去問27年分の集約・解説は Phase 3 で
/takken/quiz/{year}/{q-number}/に展開予定です。
参照条文
- 宅建業法 第46条(報酬): e-Gov 業法第46条
- 宅建業法 第65条(指示処分・業務停止処分): e-Gov 業法第65条
- 宅建業法 第66条(必要的免許取消事由): e-Gov 業法第66条
- 宅建業法 第82条(罰則): e-Gov 業法第82条
- 宅建業法施行令 第17条(報酬の額): e-Gov 宅建業法施行令
- 国土交通省告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号、最終改正令和6年6月21日): → 国交省 宅建業法の解釈・運用の考え方
関連カテゴリ
- 5_6 媒介契約 — 報酬請求権の前提となる媒介契約のルール
- 5_5 業務上の規制 — 業者の一般的な業務規制
- 5_11 監督処分・罰則 — 報酬規制違反時の処分
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5_11 監督処分・罰則 — 報酬上限違反を含む業法違反に対する処分体系に進みます。
本教材は 令和8年度(2026年度)宅地建物取引士資格試験 を対象として、2026 年 4 月 1 日時点で施行されている法令 に基づき執筆しています。法改正は
/takken/changelog/に掲載します。