保証協会 — 営業保証金の代替として分担金で済ます
この章の主張
- 保証協会の社員になれば、本店1,000万円+支店500万円の供託は不要になる。
- 代わりに本店60万円+支店30万円の分担金を協会へ納付するだけで足りる。
- 数字と期間(2週間/1週間/60万・30万)を3点で押さえれば、過去問の8割は判別できる。
1. 保証協会制度の全体像 — 営業保証金の代替として分担金を納付
業法第64条の2は、宅建業者の取引相手を保護する仕組みとして、保証協会への加入による分担金納付の道を用意しています。社員になれば本店1,000万円+支店ごと500万円の営業保証金供託(業法第25条、施行令第2条の4)が不要になります。
業法第64条の8第1項: 「宅地建物取引業保証協会の社員は、当該保証協会に加入しようとする日までに、政令で定める額の弁済業務保証金分担金を当該保証協会に納付しなければならない」(e-Gov 業法第64条の8)
分担金の額は施行令第7条で本店60万円・支店ごと30万円と定められます。営業保証金の約16分の1で済むため、中小業者の参入障壁を下げる制度です。なお1業者が同時に加入できる保証協会は1つに限られます(業法第64条の4第1項)。
1.1 保証協会の社員になれる時期 — 加入と同時に営業保証金を取り戻し
加入は免許取得後いつでも可能です。すでに営業保証金を供託している業者が後から協会へ加入した場合、保証協会の社員となった日から1週間以内に供託物の取戻しを請求できます。
この取戻しでは、業法第30条第2項の公告は不要です。社員となれば取引相手は協会の弁済業務保証金で保護されるため、二重の備えが要らないからです。営業保証金供託の負担が重い業者が、後から保証協会へ乗り換える実例が想定されます。
2. 分担金の納付と弁済業務保証金の供託 — 2週間以内・1週間以内の二段構え
業者と協会の間には、納付と供託の二段階のタイマーがあります。業者は新たに事務所を設置したときから2週間以内に分担金を協会へ追加納付し(業法第64条の9第2項)、協会は分担金を受領した日から1週間以内に法務大臣・国土交通大臣の指定供託所へ弁済業務保証金として供託します(業法第64条の7第1項)。
この2週間を1日でも過ぎると、業者は協会の社員資格を失います(業法第64条の9第3項)。社員資格を失った業者はその日から1週間以内に営業保証金を供託しなければ業務を継続できません(業法第64条の15)。期間管理が試験の最頻出論点です。
2.1 分担金は金銭のみ — 有価証券での納付は不可
営業保証金は国債・地方債等の有価証券での供託が認められます(業法第25条第3項)。一方で分担金は金銭のみで納付しなければなりません(業法施行令第7条)。協会が供託所へ供託する際の弁済業務保証金についても、有価証券による供託は可能ですが、業者から協会への分担金は金銭限定です。
3. 弁済の手続 — 還付請求から還付充当金納付まで
取引相手が宅建業に関する取引で業者に対する債権を持つに至った場合、保証協会の認証を受けたうえで供託所に対し還付請求をします(業法第64条の8第2項)。供託所から還付された後、協会は社員業者へ通知し、業者は通知を受けた日から2週間以内に還付額相当の還付充当金を協会へ納付しなければなりません(業法第64条の10第2項)。
2週間を過ぎても納付がない業者は協会の社員資格を失います(業法第64条の10第3項)。協会も還付額相当の弁済業務保証金を新たに供託しなおす義務を負います(業法第64条の8第3項)。取引相手への保護を絶やさない設計です。
3.1 還付額の上限 — 営業保証金相当額が限度
還付額には上限があります。業法第64条の8第1項は、当該社員業者が保証協会の社員でなかったとしたら供託すべき営業保証金の額を限度とすると定めます。本店のみの業者なら1,000万円、本支店5か所の業者なら1,000万円+500万円×4=3,000万円が上限です。
| 還付の3要件 | 内容 |
|---|---|
| 主体 | 取引時点で社員業者と取引した者 |
| 取引 | 宅建業に関する取引から生じた債権 |
| 限度 | 営業保証金相当額(本店1,000万円+支店500万円×n) |
社員資格を失った後の取引相手も、社員であった期間中の取引については弁済対象になります(業法第64条の11)。
4. 保証協会の業務 — 弁済以外の必須業務と任意業務
業法第64条の3は保証協会の業務を必須業務と任意業務に分けます。必須は3つで、任意は国土交通大臣の承認を受けて行う業務群です。
| 区分 | 業務 | 根拠 |
|---|---|---|
| 必須 | 弁済業務 | 業法第64条の3第1項第2号 |
| 必須 | 研修業務(新規入社・継続) | 業法第64条の3第1項第3号 |
| 必須 | 苦情解決業務 | 業法第64条の3第1項第1号 |
| 任意 | 手付金等保管業務 | 業法第64条の3第2項第1号、第41条の2 |
| 任意 | 一般保証業務 | 業法第64条の3第2項第2号 |
| 任意 | その他の業務(大臣承認) | 業法第64条の3第2項第3号 |
苦情解決は社員業者の取り扱う業務に関する取引相手からの苦情を対象とします(業法第64条の5)。協会は社員に対し文書や口頭で資料提出を求めることができ、社員はこれに正当な理由なく拒めません。
4.1 新規入社員研修と継続研修 — 社員業者の研修義務
業法第64条の6は、保証協会が社員業者の取り扱う業務に関し新たに宅建士または従業者となった者に対する研修と、現に従事する者に対する継続的な研修を実施する義務を負うと定めます。研修受講機会の提供は社員業者の責務でもあります。
実務上は入社時の新規研修と年1回程度の継続研修が両輪です。研修内容は法令の改正、業務上の倫理、消費者保護の動向など、宅建業の実務全般にわたります。
このカテゴリから出る過去問(公式由来確認済の問題)
- 令和元年度試験 問33 — 論点: 弁済業務保証金分担金の納付期限と金銭限定
- 令和2年度10月試験 問36 — 論点: 還付請求と認証
- 令和3年度10月試験 問31 — 論点: 還付充当金の納付期限
- 令和4年度試験 問39 — 論点: 保証協会の業務範囲
- 令和5年度試験 問44 — 論点: 営業保証金との比較
各問題の出題趣旨と解説は Phase 3 で
/takken/quiz/{year}/{q-number}/に展開予定です。出典: 一般財団法人 不動産適正取引推進機構(→ RETIO 試験情報)。
参照条文
- 宅建業法 第25条(営業保証金の供託): e-Gov 業法第25条
- 宅建業法 第30条(営業保証金の取戻し): e-Gov 業法第30条
- 宅建業法 第64条の2(保証協会の指定): e-Gov 業法第64条の2
- 宅建業法 第64条の3(保証協会の業務): e-Gov 業法第64条の3
- 宅建業法 第64条の4(社員資格): e-Gov 業法第64条の4
- 宅建業法 第64条の5(苦情解決): e-Gov 業法第64条の5
- 宅建業法 第64条の6(研修業務): e-Gov 業法第64条の6
- 宅建業法 第64条の7(弁済業務保証金の供託): e-Gov 業法第64条の7
- 宅建業法 第64条の8(弁済業務保証金分担金): e-Gov 業法第64条の8
- 宅建業法 第64条の9(分担金の追加納付): e-Gov 業法第64条の9
- 宅建業法 第64条の10(還付充当金の納付): e-Gov 業法第64条の10
- 宅建業法 第64条の11(社員資格喪失後の弁済): e-Gov 業法第64条の11
- 宅建業法 第64条の15(社員資格喪失後の営業保証金供託): e-Gov 業法第64条の15
- 宅建業法施行令 第7条(分担金の額): e-Gov 施行令第7条
関連カテゴリ
- 5_3 営業保証金 — 保証協会非加入業者が選ぶ供託制度。本店1,000万・支店500万との対比で覚える
- 5_1 宅地建物取引業・免許 — 保証協会への加入の前提となる免許制度
- 5_5 業務上の規制 — 業法第35条の2の供託所等説明義務とつながる
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5_5 業務上の規制 — 保証協会の社員業者は、契約成立前の供託所等説明で「協会の社員である旨」を取引相手へ告げる義務があります。次は業務上の規制で全体を見渡します。
本教材は 令和8年度(2026年度)宅地建物取引士資格試験 を対象として、2026 年 4 月 1 日時点で施行されている法令 に基づき執筆しています。法改正は
/takken/changelog/に掲載します。