別表四と五

別表四で「所得」を計算する

1-1. 益金と損金 ── 収益・費用の「税務バージョン」

簿記3級で学んだP/Lの構造を思い出してください。

収益 - 費用 = 利益

税務の世界にも同じ構造がありますが、呼び名が変わります。

益金 - 損金 = 所得
会計の用語税務の用語意味
収益益金(えききん)儲けの「入ってくる側」
費用及び損失損金(そんきん)儲けの「出ていく側」
利益所得(しょとく)差し引きした「儲け」

益金は会計の収益とほぼ同じですが、完全には一致しません。損金も費用とほぼ同じですが、やはり一致しません。

具体的には、益金は「資産の販売や役務(サービス)の提供による収益」を基本としつつ、法人税法が特別に定める項目(「別段の定め」と呼びます)によって範囲が調整されます。損金も同様に、売上原価や販管費を基本としつつ、別段の定めで範囲が調整されます。

このズレを調整するのが、次に説明する4種類の税務調整です。

1-2. 税務調整は4種類 ── 益金算入・益金不算入・損金算入・損金不算入

会計の収益・費用と税務の益金・損金のズレは、次の4パターンに分類できます。

調整の種類別表四での処理意味所得への影響
益金算入加算(+)会計で収益にしていないが、税務では益金になる所得が増える
益金不算入減算(-)会計で収益にしているが、税務では益金にならない所得が減る
損金算入減算(-)会計で費用にしていないが、税務では損金になる所得が減る
損金不算入加算(+)会計で費用にしているが、税務では損金にならない所得が増える

用語がたくさん出てきますが、シンプルに整理すると次のとおりです。

  • 加算(所得が増える調整): 益金算入と損金不算入
  • 減算(所得が減る調整): 益金不算入と損金算入

「算入」は「カウントする」、「不算入」は「カウントしない」という意味です。たとえば「益金算入」は「益金にカウントする」、「益金不算入」は「益金にカウントしない」ということです。

4種類の税務調整の関係図

1-3. 益金の調整 ── 収益との違いを理解する

益金算入の具体例

会計では収益として計上していないが、税務では益金に含めるものです。

代表例は 特別償却準備金の取崩額圧縮記帳積立金の取崩額 です。これらは過去に税制上の優遇を受けて課税を繰り延べた分を、後の年度で「取り戻す」ための調整です。簿記3級の範囲外ですが、「過去に税金を安くしてもらった分を、後で課税し直す仕組み」と理解してください。

益金不算入の具体例

会計では収益として計上しているが、税務では益金にカウントしないものです。

代表例は 受取配当金の益金不算入 です。他の会社から受け取った配当金は、簿記3級でも「受取配当金」として収益に計上しましたね。しかし、配当金は支払った側の会社ですでに法人税が課税された「税引後の利益」から支払われています。受け取った側でもう一度課税すると二重課税になってしまうため、法人税法では受取配当金の全部または一部を益金に算入しないこととしています。

益金の計算式

まとめると、益金は次のように計算されます。

益金(900)= 収益(1,000)+ 益金算入(50)- 益金不算入(150)

1-4. 損金の調整 ── 費用との違いを理解する

損金算入の具体例

会計では費用として計上していないが、税務では損金にカウントするものです。

代表例は 前期確定分の事業税の納付額 です。簿記3級で「未払法人税等」を決算整理仕訳で計上したことを覚えていますか。

(前期末の仕訳)
借方: 法人税等     xxx  /  貸方: 未払法人税等  xxx

事業税は、前期末に未払計上した時点では税務上の損金にはなりません。翌期に実際に納税したときに初めて損金として認められます。そのため、当期の別表四で「損金算入」として減算します。

もう1つの代表例は 欠損金の繰越控除 です。過去の赤字(欠損金)を当期の黒字(所得)から差し引ける制度で、これも別表四で減算されます。

損金不算入の具体例

会計では費用として計上しているが、税務では損金にカウントしないものです。実務で最も頻繁に登場する調整です。

損金不算入の項目理由
法人税・住民税の納付額所得に課税して計算した税金自体を損金にすると循環してしまうため
交際費の限度超過額交際費の全額を損金にすると際限なく使えてしまうため、一定の限度額を超える部分は損金不算入
減価償却費の限度超過額税法が定める償却限度額を超えて償却した部分は損金にならない
延滞税・加算税ペナルティを損金にすると制裁の意味がなくなるため

法人税・住民税が損金不算入になる理由は直感的に分かりにくいかもしれません。法人税は「所得 x 税率」で計算しますが、もしその法人税自体を損金(経費)にできてしまうと、所得が減り、法人税が減り、すると所得が増え……と堂々巡りになってしまいます。そのため、法人税と住民税は損金に算入できないルールになっています。

ただし 事業税 は損金算入が認められます(ただし計上時期が異なる点は上述のとおりです)。

損金の計算式

まとめると、損金は次のように計算されます。

損金(400)= 費用及び損失(600)+ 損金算入(50)- 損金不算入(250)

1-4b. 決算調整と申告調整

税務調整には、帳簿上で行うもの(決算調整)と、別表上でのみ行うもの(申告調整)の2種類があります。

区分意味具体例
決算調整帳簿に仕訳を記録しないと損金算入が認められない調整減価償却費(損金経理が要件)、貸倒引当金繰入額
申告調整帳簿の仕訳は不要で、別表上の記載だけで調整が完了する受取配当等の益金不算入、交際費等の損金不算入

たとえば減価償却費は、会計上で費用として帳簿に計上する(=損金経理する)ことが税法上の損金算入の要件です。帳簿に記録しなければ、どれだけ税法上の限度額があっても損金にはなりません。一方、受取配当等の益金不算入は、帳簿上の仕訳は必要なく、別表四で減算するだけで完了します。

1-5. P/L → 別表四の調整プロセスを数字で追う

ここまでの内容を1つの数値例で通して確認しましょう。

ステップ1: P/Lの利益を求める(会計)

P/L(損益計算書)
──────────────────
  収益          1,000
- 費用及び損失    600
──────────────────
= 当期純利益      400

ステップ2: 益金と損金を計算する(税務)

益金 = 収益(1,000) + 益金算入(50) - 益金不算入(150) = 900
損金 = 費用(600)   + 損金算入(50) - 損金不算入(250) = 400

ステップ3: 別表四で所得を計算する

益金から損金を引いて所得を求めることもできますが、別表四は「利益からの調整」で計算します。

所得 = 利益(400)
     + 益金算入(50) + 損金不算入(250)  ← 加算 +300
     - 益金不算入(150) - 損金算入(50)  ← 減算 -200
     = 500

別表四の形式で書くと次のようになります。

区分項目総額
当期純利益400
加算益金算入(例: 準備金取崩額)50
加算損金不算入(例: 法人税等、交際費超過額など)250
減算益金不算入(例: 受取配当等)150
減算損金算入(例: 前期事業税、欠損金繰越控除)50
所得金額500

利益(400)に加算(+300)して減算(-200)すると所得(500)になります。最初から「益金 - 損金」で計算した場合(900 - 400 = 500)と同じ答えが得られることを確認してください。

P/Lから別表四を経て所得を計算するプロセス図

1-6. 別表四の様式 ── 「総額」「留保」「社外流出」の3列

実際の別表四の様式には、金額を記入する列が3つあります。

名称記載する内容
1総額所得金額の計算に使う全額を記載する(ここまでの解説はすべて総額の話)
2留保社内に留保された所得に関する調整
3社外流出社外に流出した金額に関する調整

別表四の1行目「当期利益」を見てみましょう。

  • 総額(1): 当期純利益 10,000
  • 留保(2): 当期純利益 10,000 - 剰余金の配当 1,000 = 9,000
  • 社外流出(3): 配当 1,000

つまり、当期純利益のうち株主に配当した分は「社外流出」に、残りは「留保」に記載されます。

ここで、簿記3級で学んだ「繰越利益剰余金」を思い出してください。当期純利益は繰越利益剰余金に振り替えられ、株主総会の決議を経て剰余金の処分として配当が支払われます(P/Lの費用ではなく、純資産の減少です)。配当は会社の外に出ていくお金(社外流出)であり、残りは会社の中に蓄積されるお金(留保)です。

1-7. 「留保」に記載する項目

留保に記載するのは、別表五(一)の利益積立金額に連動する税務調整です。つまり、その調整結果が翌期以後の純資産に持ち越されるものが「留保」に分類されます。

留保に書く3つのカテゴリ

カテゴリ内容具体例
(1) 純資産の差異会計と税務でB/Sの純資産に差が出る調整減価償却の償却超過額、貸倒引当金繰入超過額
(2) 法人税等法人税・住民税に関する調整損金経理をした法人税、損金経理をした住民税
(3) 納税充当金未払法人税等(税務では「納税充当金」と呼ぶ)に関する調整損金経理をした納税充当金、納税充当金から支出した事業税等

留保の本質は「別表五(一)の利益積立金額に影響する調整」です。 多くは将来解消する差異ですが、法人税等の調整のように「永久に解消しないが利益積立金額に影響するもの」も含まれます。

たとえば「減価償却費の償却超過額」を考えてみましょう。会計で計上した減価償却費が税法の限度額を超えていた場合、超過分は当期は損金不算入(加算・留保)されます。この超過額は別表五(一)に「減価償却超過額」として記録され、翌期以後に税法の限度額に余裕が出たときに「認容」(減算・留保)され、別表五(一)から消えていきます。

(税務上のイメージ仕訳 ── 減価償却超過額を否認するとき)
借方: 建物(税務上の簿価を戻す)  xxx  /  貸方: 減価償却費(P/L科目)  xxx
→ 税務上の資産・負債が変動する = 利益積立金額に影響 = 留保

留保欄に記載された金額は、別表五(一)に転記され、税務上の利益の蓄積(「利益積立金額」)の計算に使われます。この点は後のチャプターで詳しく解説します。

「損金経理」とは: 会計上、費用または損失として経理処理すること。ただし、損金経理をしたからといって税務上も損金に算入されるとは限りません。たとえば、法人税を損金経理しても税務上は損金不算入です。

留保に記載する主な調整項目

加算(留保):

項目説明
損金経理をした法人税会計で法人税を費用処理した金額。税務では損金にならない
損金経理をした住民税会計で住民税を費用処理した金額。税務では損金にならない
損金経理をした納税充当金決算で「未払法人税等」を計上した金額
減価償却の償却超過額税法の限度額を超えた減価償却費
貸倒引当金繰入超過額税法の限度額を超えた貸倒引当金繰入額

減算(留保):

項目説明
減価償却超過額の当期認容額過去に否認された減価償却費が当期に認容(取り戻し)される金額
納税充当金から支出した事業税等前期末に未払計上した事業税を当期に納付した金額

1-8. 「社外流出」に記載する項目

社外流出に記載するのは、当期だけで課税関係が終了する調整です。翌期以後に「取り戻し」が起こらない、いわば「一発勝負」の調整項目です。

社外流出に書く3つのカテゴリ

カテゴリ内容具体例
(1) 配当当期中に株主に支払った配当金剰余金の配当
(2) 永久差異会計と税務の差異が永久に解消しない調整交際費の損金不算入額、役員給与の損金不算入額
(3) 課税外収入(※印)金銭を受け取っているが課税対象外となる調整受取配当等の益金不算入額

永久差異とは何か

「留保」が「別表五(一)の利益積立金額に連動する調整」だったのに対し、「社外流出」は 利益積立金額に残さない調整 です。多くは永久に解消しない差異(永久差異)ですが、それだけではありません。

たとえば交際費の損金不算入額。会計では費用として計上しますが、税法では限度額を超える交際費を永久に損金として認めません。当期に加算されて課税された後、翌期以後に「やっぱり損金にします」という認容は絶対に起こりません。

(会計の仕訳)
借方: 交際費(P/L科目)  100  /  貸方: 現金(B/S科目)  100

→ 現金は会社の外に出ていっている(社外流出)
→ 税務では損金にならないが、翌期以後に取り戻せない(永久差異)

課税外収入(※印)とは何か

別表四の社外流出欄で減算される項目には「※」印が付いています。これらは「課税外収入」と呼ばれます。

たとえば受取配当等の益金不算入。会社は配当金を現金で受け取っているので、純資産は増えています。しかし税務では課税しない(益金にカウントしない)ため、別表四で減算します。実際にお金は入ってきているけれど課税しない、という性質のものは「留保」ではなく「社外流出」に※印付きで記載するルールになっています。

社外流出に記載する主な調整項目

加算(社外流出):

項目説明
附帯税・加算税・延滞金・過怠税税務上のペナルティ。損金にならず、翌期の取り戻しもない
交際費等の損金不算入額限度超過の交際費。現金は社外に支出済み
寄附金の損金不算入額限度超過の寄附金。現金は社外に支出済み
役員給与の損金不算入額定期同額給与等の要件を満たさない役員報酬
法人税額から控除される所得税額源泉徴収された所得税(税額控除の対象として加算)

減算(社外流出・※印):

項目説明
受取配当等の益金不算入額(※)二重課税排除のため益金にカウントしない
所得税額等の還付金額(※)国から還付を受ける金額
欠損金の繰戻しによる還付金額(※)過去の欠損金に基づく還付

1-9. 別表四の全体像を見てみよう

ここまでの内容を踏まえて、別表四の全体像を確認しましょう。数字は架空の例です。

区分項目総額(1)留保(2)社外流出(3)
当期利益10,0009,000配当 1,000
加算損金経理をした法人税xxxxxx
損金経理をした住民税xxxxxx
損金経理をした納税充当金xxxxxx
損金経理をした附帯税及び過怠税xxxその他 xxx
減価償却の償却超過額xxxxxx
交際費等の損金不算入額xxxその他 xxx
貸倒引当金繰入超過額xxxxxx
小計xxxxxx
減算減価償却超過額の当期認容額xxxxxx
納税充当金から支出した事業税等xxxxxx
受取配当等の益金不算入額xxx※ xxx
所得税額等の還付金額xxxxxx
小計xxxxxx
仮計xxxxxx外※ xxx
寄附金の損金不算入額xxxその他 xxx
法人税額から控除される所得税額xxxその他 xxx
欠損金の当期控除額△xxx※ △xxx
所得金額15,000xxx外※ xxx

この表で確認してほしいポイントは3つです。

  1. 1行目: 当期利益がP/Lからそのまま入る。留保は配当を引いた残り、社外流出に配当金額が入る
  2. 加算・減算: 各項目が「留保」か「社外流出」のどちらかに振り分けられている
  3. 最終行: 所得金額が計算される。留保欄の合計は「社内に留保された所得」を表し、別表五(一)の利益積立金額の計算につながる
別表四の様式イメージ図

1-10. まとめ ── Ch1 のポイント

  • 法人税は会計の「利益」ではなく税務の「所得」に課税される
  • 所得は「益金 - 損金」で計算されるが、実際にはP/Lの利益をスタートにして税務調整を加減算する(別表四)
  • 税務調整は4種類: 益金算入(加算)、損金不算入(加算)、益金不算入(減算)、損金算入(減算)
  • 別表四には「総額」「留保」「社外流出」の3列がある
    • 留保: 別表五(一)の利益積立金額に連動する調整 → 別表五(一)へ
    • 社外流出: 利益積立金額に残さない調整(永久差異・配当・課税外収入※印)