別表四と五

法人税等の納付と別表

この章では、法人税等の「前期確定分の納付→中間分の納付→当期確定分の未払計上」という一連の流れを、5つの会計処理パターンごとに別表四・別表五(一)・別表五(二)への記載方法とともに学びます。

簿記3級では「法人税、住民税及び事業税 ×× / 未払法人税等 ××」という仕訳を学びましたが、実務では納付方法が複数あり、それぞれ別表への記載が異なります。

1. 決算確定と別表四の作成の流れ

(1) 「鶏と卵」の疑問を解消する

法人税申告書を初めて学ぶ人が必ず抱く疑問があります。

「別表四は税引後当期純利益からスタートする。でも当期純利益を計算するには未払法人税等が必要で、未払法人税等を計算するには課税所得が必要で、課税所得を計算するには別表四が必要。これでは永遠に完成しないのでは?」

この疑問の答えは、「税金引当前の別表四」を先に作ることです。

(2) 3ステップで理解する

ステップ1: 税金引当前の別表四で課税所得を計算

未払法人税等を計上する前(法人税等の中間分だけが費用計上された状態)の当期純利益を出発点に、法人税等の引当て以外の税務調整をすべて行い、課税所得を計算します。

【未払法人税等 引当前の損益計算書】
売上高                    200,000
税引前当期純利益           10,000
法人税、住民税及び事業税     1,500 ← 中間納付分のみ
当期純利益                  8,500

【税金引当前の別表四】
当期利益                    8,500
損金経理をした納税充当金        0 ← まだ引当てていない
申告加算                  + 1,700
申告減算                  △  200
課税所得                   10,000

ステップ2: 確定分の未払法人税等を計算

課税所得に基づき、法人税・住民税・事業税の年税額を計算し、中間納付額を差し引いて確定要納付額を算出します。

法人税等の年税額     3,000
中間納付額        △ 1,500
確定分の要納付額     1,500(内訳: 法人税1,200、住民税100、事業税200)

ステップ3: 未払法人税等の決算整理仕訳

法人税、住民税及び事業税 1,500 / 未払法人税等 1,500

この仕訳後の当期純利益(7,000)から始まる別表四では、未払法人税等の引当額(1,500)が「損金経理をした納税充当金」として加算されるため、課税所得はステップ1と同じ10,000になります。

(3) P/Lアプローチで課税所得を検証

別表四とは別の方法で課税所得を検証する方法を「P/Lアプローチ」といいます。

税引前当期純利益                10,000
前期確定分の事業税支払額       △  150  ← 当期に損金算入
当期中間分の事業税支払額       △  200  ← 当期に損金算入
法人税等以外の加算項目         +  400
法人税等以外の減算項目         △   50
課税所得                       10,000

この方法では、法人税等の処理を一切気にせず、税引前当期純利益をスタートにして事業税の損金算入額と、法人税等以外の税務調整だけで課税所得を検証できます。

2. 法人税等の税率(本章の前提条件)

本章の事例では、タックス・プルーフの端数処理を簡便化するため、以下の仮定税率を使います。

税目税率
法人税(地方法人税を含む)25%
住民税 法人税割6%(課税所得に対して1.5%)
住民税 均等割20/年
事業税(特別法人事業税を含む)5%
合計税率31.5%
実効税率30%

前期決算での確定要納付額:

税目前期確定納付額
法人税1,000
住民税150
事業税250
合計1,400

3. 前期確定分の法人税等の納付

すべてのパターンに共通する最初のステップです。前期末に計上した未払法人税等を取り崩して納付します。

会計処理

未払法人税等 1,400 / 現預金 1,400

別表四の記載

未払法人税等(納税充当金)を取り崩して納付した前期確定分の事業税は、「納税充当金から支出した事業税等」で減算「留保2」します。事業税は支払日に損金算入されるためです。

区分総額留保社外流出
減算: 納税充当金から支出した事業税等250250

法人税と住民税は損金不算入ですが、納税充当金の取崩しで納付しているため、この段階では別表四に加算項目は出てきません。

別表五(一)の記載

区分期首期末
納税充当金1,4001,4000
未納法人税△1,000△1,0000
未納住民税△150△1500
差引合計250△2500

税務の純資産は250減少しました。これは当期に損金算入された事業税250に対応しています。

別表五(二)の記載

前期分の法人税等は「充当金取崩しによる納付3」に記載します。事業税は「当期発生税額2」と「充当金取崩しによる納付3」に同額を記載します。

4. パターン1: 中間分を損金経理で納付、確定分を未払計上

最も一般的なパターンです。中間分を「法人税、住民税及び事業税」で費用処理し、確定分を未払法人税等に計上します。

(1) 中間分の会計処理

法人税、住民税及び事業税 1,470 / 現預金 1,470
(内訳: 法人税1,200、住民税70、事業税200)

(2) 中間分の別表四

損金経理で納付した中間分の法人税(1,200)と住民税(70)は損金不算入のため加算「留保2」します。事業税(200)は損金算入されるため調整不要です。

区分総額留保
加算: 損金経理をした法人税1,2001,200
加算: 損金経理をした住民税7070
減算: 納税充当金から支出した事業税等250250
留保所得1,0201,020

(3) 中間分の別表五(一)

中間分の法人税・住民税は「増3」で発生、「減2」で納付を両建てで記載します。結果として純資産残高には影響しません。事業税の中間分は支払日に損金算入され、会計でも費用処理しているため税務調整不要です。

区分期首期末
納税充当金1,4001,4000
未納法人税△1,000△1,000, △1,200中間 △1,2000
未納住民税△150△150, △70中間 △700
差引合計2500

(4) 中間分の別表五(二)

中間分の法人税等は「損金経理による納付5」に記載します。

(5) 決算の確定と法人税等の計算

税金引当前の別表四で課税所得10,000を計算し、法人税等の年税額を算出します。

税目年税額中間納付額確定納付額
法人税2,5001,2001,300
住民税17070100
事業税500200300
合計3,1701,4701,700

(6) 確定分の会計処理

法人税、住民税及び事業税 1,700 / 未払法人税等 1,700

(7) 確定分の別表四(完成版)

区分総額留保社外流出
当期利益7,2807,280
加算: 損金経理をした法人税1,2001,200
加算: 損金経理をした住民税7070
加算: 損金経理をした納税充当金1,7001,700
減算: 納税充当金から支出した事業税等250250
所得金額10,00010,000

(8) 確定分の別表五(一)(完成版)

区分期首期末
繰越損益金252,740252,740260,020260,020
納税充当金1,4001,4001,7001,700
未納法人税△1,000△2,200中間△1,200, 確定△1,300△1,300
未納住民税△150△220中間△70, 確定△100△100
差引合計252,990260,320

税務の期末利益積立金額 260,320 - 未払事業税 300 = 会計の期末利益剰余金 260,020

(9) 確定分の別表五(二)(完成版)

税目期首未納当期発生充当金取崩し損金経理期末未納
法人税 前期分1,0001,0000
法人税 中間1,2001,2000
法人税 確定1,3001,300
住民税 前期分1501500
住民税 中間70700
住民税 確定100100
事業税 前期分2502500
事業税 中間2002000

(10) 税金勘定の動きとタックス・プルーフ

項目未払法人税等(B/S)法人税等(P/L)
期首(1,400)
前期確定分支払+1,400
中間納付1,470
期末引当計上(1,700)1,700
合計(1,700)3,170

タックス・プルーフ:

項目金額税率
税引前当期純利益10,450100.00%
法人税等3,17030.335%
未払事業税の期中増加 50 x 30%△15
均等割△20
調整後3,13530.00%

5. パターン2: 中間分を充当金取崩しで納付(引当て+取崩し)、確定分を未払計上

前期末に引き当てた未払法人税等(納税充当金)をいったん全額取り崩した後、中間分も未払法人税等の取崩しで納付するパターンです。

(1) 中間分の会計処理

未払法人税等 1,470 / 現預金 1,470
(内訳: 法人税1,200、住民税70、事業税200)

この時点で未払法人税等はマイナス残高(△1,470)になります。

(2) 中間分の別表四

損金経理している項目がないため、加算項目はありません。未払法人税等の取崩しで支払った事業税の前期確定分(250)と中間分(200)を合わせて「納税充当金から支出した事業税等」で減算します。

区分総額留保
減算: 納税充当金から支出した事業税等450450
留保所得△450△450

(3) 中間分の別表五(一)

納税充当金の「減2」に取崩額2,870(前期確定分1,400 + 中間分1,470)を記載。

区分期首期末
納税充当金1,4002,870△1,470
未納法人税△1,000△1,000, △1,200中間△1,2000
未納住民税△150△150, △70中間△700
差引合計250△200

(4) 決算確定後の別表四(完成版)

当期中間分と確定分の未払法人税等の引当額(3,170)を「損金経理をした納税充当金」で加算します。

区分総額留保
当期利益7,2807,280
加算: 損金経理をした納税充当金3,1703,170
減算: 納税充当金から支出した事業税等450450
所得金額10,00010,000

(5) 決算確定後の別表五(一)(完成版)

区分期首期末
繰越損益金252,740252,740260,020260,020
納税充当金1,4002,8703,1701,700
未納法人税△1,000△2,200中間△1,200, 確定△1,300△1,300
未納住民税△150△220中間△70, 確定△100△100
差引合計252,990260,320

結果はパターン1と同じです。どのパターンで処理しても、最終的な別表五(一)の期末残高は同じになります。

(6) 別表四の総額表示

別表四には「総額表示」という記載方法もあります。これは法人税等の動きを別表五(一)と完全に合わせる方法です。

区分総額留保
当期利益7,2807,280
加算: 損金経理をした法人税2,2002,200
加算: 損金経理をした住民税220220
加算: 損金経理をした納税充当金3,1703,170
減算: 納税充当金から支出した事業税等450450
所得金額10,00010,000

総額表示にすると、別表四の留保欄の増減が別表五(一)の当期の増減とピッタリ一致します。

(7) タックス・プルーフ

パターン1と同じ結果になります。

項目金額税率
税引前当期純利益10,450100.00%
法人税等3,17030.335%
未払事業税の期中増加 50 x 30%△15
均等割△20
調整後3,13530.00%

6. パターン3: 中間分を充当金取崩しで納付(前期の充当金をそのまま流用)

パターン2と実質的に同じ結果になります。違いは、中間分の処理時に「引当て→取崩し」の2ステップではなく、前期の納税充当金をそのまま取り崩す点だけです。別表四・五(一)の最終結果はパターン2と一致するため、簡潔に示します。

(1) 会計処理

【中間分】
未払法人税等 1,470 / 現預金 1,470

【確定分】
法人税、住民税及び事業税 3,170 / 未払法人税等 3,170

中間分は未払法人税等の取崩し、確定分は損金経理で引当てます。

(2) 別表四(完成版)

区分総額留保
当期利益7,2807,280
加算: 損金経理をした納税充当金3,1703,170
減算: 納税充当金から支出した事業税等450450
所得金額10,00010,000

パターン2と同じ結果です。

(3) 別表五(一)(完成版)

パターン2と同じ期末残高になります。

(4) 別表五(二)

中間分は「充当金取崩しによる納付3」に記載されます。確定分は期末時点で未納のため、「期末現在未納税額6」に記載されます(パターン1の確定分と同じ扱い)。

7. パターン4: 中間分を充当金の引当てと取崩しで納付、確定分を未払計上

中間決算で未払法人税等を計上し、取り崩して納付するパターンです。

(1) 会計処理

【中間分引当て】
法人税、住民税及び事業税 1,470 / 未払法人税等 1,470

【中間分支払い】
未払法人税等 1,470 / 現預金 1,470

【確定分引当て】
法人税、住民税及び事業税 1,700 / 未払法人税等 1,700

(2) 別表四(純額表示)

中間分の未払法人税等(1,470)の計上は損金不算入なので「損金経理をした納税充当金」で加算。事業税の前期確定分(250)と中間分(200)は減算。

区分総額留保
加算: 損金経理をした納税充当金1,4701,470
減算: 納税充当金から支出した事業税等450450
留保所得1,0201,020

(3) 決算確定後の別表四(完成版)

区分総額留保
当期利益7,2807,280
加算: 損金経理をした納税充当金3,1703,170
減算: 納税充当金から支出した事業税等450450
所得金額10,00010,000

(4) 別表五(一)

中間分の引当てと取崩しは納税充当金の「減2」と「増3」に両建てで記載。中間分の未納法人税・未納住民税も発生と納付を両建てで記載するため、純資産残高への影響はありません。

(5) 別表五(二)

中間分は「充当金取崩しによる納付3」に記載。パターン2と同じです。

(6) タックス・プルーフ

パターン1〜3と同じ結果になります。

8. パターン5: 中間分を仮払経理

中間納付額をいったん仮払金(仮払税金)に計上するパターンです。

(1) 中間分の会計処理

仮払金 1,470 / 現預金 1,470

(2) 中間分の別表四

仮払計上した中間分の法人税等は「仮払税金認定損」で減算「留保2」します。税務では仮払税金を資産と認めず、損金として処理するのです。ただし、そのうち損金不算入の法人税(1,200)と住民税(70)は加算「留保2」します。

区分総額留保
加算: 損金経理をした法人税1,2001,200
加算: 損金経理をした住民税7070
減算: 納税充当金から支出した事業税等250250
減算: 仮払税金認定損1,4701,470
留保所得△450△450

(3) 中間分の別表五(一)

会計で資産計上した仮払税金(1,470)を税務では資産として認めず、純資産のマイナス項目として「増3」に△印を付けて記載します。

区分期首期末
仮払税金△1,470△1,470

(4) 中間分の別表五(二)

仮払計上した中間分は「仮払経理による納付4」に記載します。

(5) 確定分の会計処理

【仮払金の振替】
法人税、住民税及び事業税 1,470 / 仮払金 1,470

【確定分の引当て】
法人税、住民税及び事業税 1,700 / 未払法人税等 1,700

(6) 確定分の別表四

仮払税金の振替を「仮払税金消却不算入額」で加算、「仮払税金認定損」で減算(両建処理)。さらに確定分の未払法人税等(1,700)を「損金経理をした納税充当金」で加算。

区分総額留保
当期利益7,2807,280
加算: 損金経理をした法人税1,2001,200
加算: 損金経理をした住民税7070
加算: 損金経理をした納税充当金1,7001,700
加算: 仮払税金消却不算入額1,4701,470
減算: 納税充当金から支出した事業税等250250
減算: 仮払税金認定損1,4701,470
所得金額10,00010,000

仮払税金の両建処理を省略すると、パターン1の別表四と実質的に同じになります。

(7) 確定分の別表五(一)

仮払税金の振替を「減2」に記載して消去。最終的な期末残高はパターン1〜4と同じです。

区分期首期末
仮払税金△1,470△1,4700
繰越損益金252,740252,740260,020260,020
納税充当金1,4001,4001,7001,700
未納法人税△1,000△2,200中間△1,200, 確定△1,300△1,300
未納住民税△150△220中間△70, 確定△100△100
差引合計252,990260,320

(8) 税金勘定の動き

項目未払法人税等(B/S)仮払金(B/S)法人税等(P/L)
期首(1,400)
前期確定分支払+1,400
中間納付1,470
期末引当・振替(1,700)(1,470)3,170
合計(1,700)03,170

9. 基本原則のまとめ

上記5つのパターン以外にも、前期確定分を損金経理で納付するケースなど、さまざまな組み合わせがありますが、基本原則は同じです。

基本原則まとめ:

法人税等の処理別表四の調整
損金経理で納付した法人税加算「留保2」(損金不算入)
損金経理で納付した住民税加算「留保2」(損金不算入)
損金経理をした納税充当金(未払法人税等の引当額)加算「留保2」(損金不算入)
納税充当金から支出した事業税等減算「留保2」(損金算入)
仮払税金認定損減算「留保2」(仮払税金の損金算入)
仮払税金消却不算入額加算「留保2」(振替時の加算)

パターンによらない共通の結果:

  1. 課税所得は同じ(10,000)
  2. 別表五(一)の期末残高は同じ
  3. タックス・プルーフの結果は同じ(実効税率30%で対応)
  4. 税務の期末利益積立金額 - 未払事業税 = 会計の期末利益剰余金

10. 各パターンの比較

パターン中間分の会計処理別表四の特徴別表五(二)の納付欄
1. 損金経理法人税等で費用処理法人税・住民税を加算損金経理による納付
2. 充当金取崩し未払法人税等を取崩し加算項目なし(事業税のみ減算)充当金取崩しによる納付
3. 充当金(引当て+取崩し不要)未払法人税等を取崩しパターン2と同じ充当金取崩しによる納付
4. 充当金の引当て+取崩し中間で引当て→取崩し納税充当金を加算充当金取崩しによる納付
5. 仮払経理仮払金で資産計上仮払税金認定損で減算仮払経理による納付

実務での選択: 多くの中小企業ではパターン1(損金経理)が採用されています。会計処理がシンプルで、別表への記載もわかりやすいためです。申告書作成ソフトを使う場合は、中間分の処理方法を設定で選択できます。

法人税等の5パターン比較