別表四と五

総合事例

この章では、中小法人であるワンダマル株式会社の事例を通じて、これまで学んだ別表四・別表五(一)・別表五(二)の作成、税金勘定の動き、そしてタックス・プルーフまでを一気通貫で確認します。

1. ワンダマル株式会社の概要

ワンダマル株式会社は、2019年10月1日以後に開始する事業年度の税率が適用される中小法人です。

(1) 税務調整項目

当期に発生した税務調整項目は以下の10項目です。

No.税務調整項目金額
1貸倒引当金繰入超過額500,000
2未払寄附金の否認額(寄附金の損金不算入額は0)300,000
3受取配当等の益金不算入額1,000,000
4減価償却超過額400,000
5附帯税等(罰金)の損金不算入額100,000
6未払法人税等を取り崩して支払った前期確定分の事業税200,000
7中間分の法人税(損金経理)561,800
8中間分の住民税(損金経理)94,400
9税額控除を受ける所得税額510,500
10当期確定分の未払法人税等の計上1,200,000

これらを分類すると:

  • 留保項目(一時差異): 1, 2, 4 → 別表四で加算「留保2」、別表五(一)に記載
  • 社外流出項目(永久差異): 3, 5 → 別表四で加減算「社外流出3」
  • 法人税等の処理: 6, 7, 8, 9, 10 → Ch7で学んだパターン1(損金経理)

2. 損益計算書(決算整理後)

項目金額
売上高240,100,000
売上原価168,100,000
売上総利益72,000,000
販売費及び一般管理費63,771,000
営業利益8,229,000
営業外収益
 受取利息1,000,000
 受取配当金2,000,000
営業外費用
 支払利息1,000,000
経常利益10,229,000
特別利益0
特別損失0
税引前当期純利益10,229,000
法人税、住民税及び事業税2,695,700
当期純利益7,533,300

法人税、住民税及び事業税(2,695,700)の内訳:

項目金額
中間分の法人税561,800
中間分の住民税94,400
中間分の事業税329,000
源泉所得税510,500
当期確定分の未払法人税等1,200,000
合計2,695,700

当期確定分の未払法人税等(1,200,000)の内訳:

税目金額
法人税763,000
住民税(都民税)92,000
事業税345,000
合計1,200,000

販売管理費のうち税務調整に関連する項目:

項目金額
交際費2,000,000
寄附金300,000
減価償却費1,200,000
租税公課550,000(うち罰金100,000)

繰越利益剰余金の期中変動:

項目金額
前期からの繰越利益剰余金76,921,700
剰余金の配当△1,000,000
当期純利益7,533,300
当期末の繰越利益剰余金83,455,000

3. 貸借対照表(決算整理後)

資産の部金額負債の部金額
流動資産129,000,000流動負債90,045,000
 現金預金65,000,000 買掛金42,500,000
 受取手形15,000,000 未払寄附金300,000
 売掛金25,000,000 短期借入金41,545,000
 棚卸資産25,500,000 未払消費税等4,500,000
 貸倒引当金△1,500,000 未払法人税等1,200,000
固定資産129,500,000固定負債70,000,000
 有形固定資産54,500,000 長期借入金70,000,000
  器具及び備品3,000,000負債合計160,045,000
  減価償却累計額△1,200,000株主資本98,455,000
  土地52,700,000 資本金10,000,000
 投資その他の資産75,000,000 利益剰余金88,455,000
  利益準備金2,500,000
  任意積立金2,500,000
  繰越利益剰余金83,455,000
純資産合計98,455,000
資産合計258,500,000負債純資産合計258,500,000

(注記)割引手形 12,300,000

4. 別表四の作成

別表四は当期純利益(7,533,300)からスタートし、税務調整を加減算して課税所得を計算します。

区分総額留保社外流出
当期利益又は当期欠損の額7,533,3006,533,300配当 1,000,000
加算損金経理をした法人税561,800561,800
損金経理をした住民税94,40094,400
損金経理をした納税充当金1,200,0001,200,000
損金経理をした附帯税及び過怠税100,000その他 100,000
減価償却の償却超過額400,000400,000
貸倒引当金繰入超過額500,000500,000
未払寄附金否認額300,000300,000
小計3,156,2003,056,200100,000
減算納税充当金から支出した事業税等200,000200,000
受取配当等の益金不算入額1,000,000※ 1,000,000
小計1,200,000200,0001,000,000
仮計9,489,5009,389,500
法人税額から控除される所得税額510,500その他 510,500
所得金額10,000,0009,389,500

記載のポイント解説:

  • 当期利益の留保と社外流出: 当期純利益7,533,300のうち、配当金1,000,000は「社外流出」(株主への配当で社外にお金が出ていく)、残り6,533,300が「留保」(会社に残るお金)
  • 損金経理をした法人税・住民税: 中間分の法人税561,800と住民税94,400は損金不算入のため加算「留保2」
  • 損金経理をした納税充当金: 当期確定分の未払法人税等1,200,000は損金不算入のため加算「留保2」
  • 附帯税等の損金不算入: 罰金100,000は永久差異で加算「社外流出3」
  • 減価償却超過額・貸倒引当金繰入超過額・未払寄附金否認額: 一時差異で加算「留保2」
  • 納税充当金から支出した事業税等: 前期確定分の事業税200,000は損金算入で減算「留保2」
  • 受取配当等の益金不算入額: 永久差異で減算「※社外流出3」(課税外収入)
  • 法人税額から控除される所得税額: 源泉所得税510,500は損金不算入で加算「社外流出3」

P/Lアプローチによる課税所得の検証

税引前当期純利益                          10,229,000
前期確定分の事業税支払額                △   200,000
当期中間分の事業税支払額                △   329,000
法人税等以外の加算項目(注1)           + 1,300,000
法人税等以外の減算項目(注2)           △ 1,000,000
課税所得                                  10,000,000 ← 別表四と一致!

(注1)附帯税100,000 + 減価償却超過額400,000 + 貸倒引当金繰入超過額500,000 + 未払寄附金否認額300,000 = 1,300,000

(注2)受取配当等の益金不算入額 1,000,000

5. 別表五(一)の作成

区分期首期末
利益準備金2,500,0002,500,000
任意積立金2,500,0002,500,000
貸倒引当金500,000500,000
未払寄附金否認額300,000300,000
減価償却超過額400,000400,000
繰越損益金76,921,70076,921,70083,455,00083,455,000
納税充当金1,100,0001,100,0001,200,0001,200,000
未納法人税△750,000△1,311,800中間△561,800, 確定△763,000△763,000
未納住民税△150,000△244,400中間△94,400, 確定△92,000△92,000
差引合計額82,121,70090,000,000

検算(別表四の留保所得と別表五(一)の増減の整合性):

期首差引合計額 82,121,700
+ 別表四の留保所得 9,389,500
- 法人税等の当期発生額(未納法人税 763,000 + 未納住民税 92,000 - 中間分の未納取崩等) 1,511,200
= 期末差引合計額 90,000,000 ✓

(注)別表四の留保所得がそのまま期末 - 期首と一致するわけではありません。留保所得には法人税等の加算調整が含まれますが、別表五(一)では未納法人税等として別途マイナス計上されるためです。

太枠内の増減額は「減2」と「増3」の純額です。ここでは繰越損益金の増減を含みます。

税務の純資産と会計の純資産の関係:

税務上の当期末純資産額(利益積立金額 + 資本金等)
= 90,000,000 + 10,000,000 = 100,000,000

税務上の当期末純資産額       100,000,000
- 貸倒引当金                  △500,000
- 未払寄附金否認額            △300,000
- 減価償却超過額              △400,000
- 未払事業税                  △345,000
= 会計の当期末純資産額         98,455,000 ← B/Sと一致!

別表五(一)に記載された一時差異(貸倒引当金500,000、未払寄附金否認額300,000、減価償却超過額400,000)と未払事業税(345,000)の合計1,545,000が、税務と会計の純資産の差異です。

6. 別表五(二)の作成

期首・期末の税金勘定:

期首期末
前期確定分法人税750,000、住民税150,000、事業税200,000
中間分と租税公課法人税561,800、住民税94,400、事業税329,000
当期確定分法人税763,000、住民税92,000、事業税345,000
税目期首未納当期発生充当金取崩し損金経理期末未納
法人税
 前期分750,000750,000
 当期分中間561,800561,800
 当期分確定763,000763,000
 750,0001,324,800750,000561,800763,000
住民税
 前期分150,000150,000
 当期分中間94,40094,400
 当期分確定92,00092,000
 150,000186,400150,00094,40092,000
事業税
 前期分200,000200,000
 当期中間分329,000329,000
 529,000200,000329,000

その他(租税公課)の損金経理:

項目当期発生損金経理
固定資産税等450,000450,000
源泉所得税等510,500510,500
罰金100,000100,000

納税充当金の計算:

項目金額
期首納税充当金1,100,000
繰入額(損金経理をした納税充当金)1,200,000
取崩: 法人税と住民税△900,000
取崩: 事業税△200,000
期末納税充当金1,200,000

7. 適用税率

ワンダマル株式会社に適用される税率(2021年3月期):

税目税率
法人税年800万円まで 15%、年800万円超 23.2%
地方法人税基準法人税額 x 10.3%
住民税 法人税割法人税額 x 7%
住民税 均等割70,000円/年
事業税年400万円以下 3.5%、400万円超800万円以下 5.3%、800万円超 7%
特別法人事業税標準税率による事業税額 x 37%

実効税率の計算:

実効税率 = [23.2% x (1 + 10.3% + 7%) + 7% x (1 + 37%)] / [1 + 7% x (1 + 37%)]
         = 36.8036% / 1.0959
         = 33.58%

8. 税金勘定の動き

項目未払法人税等(B/S)法人税等(P/L)
期首(1,100,000)
前期確定分支払
 法人税+750,000
 住民税+150,000
 事業税+200,000
中間納付
 法人税561,800
 住民税94,400
 事業税329,000
 源泉税510,500
期末引当計上(1,200,000)1,200,000
合計(1,200,000)2,695,700

9. タックス・プルーフの検証

ワンダマル株式会社の損益計算書では、税引前当期純利益(10,229,000)に対する法人税等(2,695,700)の負担率は26.35%です。これは実効税率33.58%と乖離していますが、会計と税務の差異を調整すれば実効税率で対応していることを検証できます。

項目調整額金額税率
税引前当期純利益10,229,000100.00%
法人税、住民税及び事業税2,695,70026.35%
会計と税務の一時差異
 貸倒引当金の繰入超過額 純増加額 500,000△167,900
 減価償却費の償却超過額 純増加額 400,000△134,320
 未払寄附金否認額 純増加額 300,000△100,740
 未払事業税 純増加額 145,000△48,691
永久差異
 受取配当等の益金不算入 1,000,000+335,800
 罰金の損金不算入 100,000△33,580
その他の差異
 住民税均等割△70,000
 法人税の税率差異+656,000
 同上に対する地方法人税分+67,568
 同上に対する住民税分+45,920
 事業税の税率差異+284,960
 同上の実効税率の影響△95,689
調整後の法人税等3,435,02833.58%

各調整項目の解説:

  • 一時差異: 各差異項目の純増加額に実効税率33.58%を乗じて計算。たとえば貸倒引当金500,000 x 33.58% = 167,900
  • 永久差異: 受取配当等の益金不算入は、本来は課税されないのに法人税等が減少する効果。罰金は逆に法人税等が増加する効果
  • 法人税の税率差異: 年所得800万円まで軽減税率15%が適用されるため、23.2%との差8.2% x 800万円 = 656,000円分、実際の法人税額は低くなっている
  • 事業税の税率差異: 事業税の段階税率(3.5%、5.3%、7%)が適用されるため、一律7%との差額

検証結果:

税引前当期純利益 10,229,000 x 実効税率 33.58% = 3,434,898(理論値)
タックス・プルーフによる法人税等                = 3,435,028

差額: 130円 ← 百円未満切捨て等による許容できる誤差の範囲内でOK!

タックス・プルーフにより、税務調整に誤りがないことが検証できました。

税効果会計を適用している場合: 一時差異に対する法人税等は「法人税等調整額」で調整済みのため、タックス・プルーフでは一時差異の項目は現れず、永久差異とその他の差異のみで検証します。

10. 総合事例のまとめ

ワンダマル株式会社の事例を通じて確認したポイント:

  1. 別表四: 当期純利益からスタートし、加算項目(損金不算入の法人税等、一時差異の加算、永久差異の加算)と減算項目(事業税の損金算入、益金不算入項目)を調整して課税所得10,000,000を算出
  2. 別表五(一): 税務と会計の純資産の差異を記録。期末の差引合計額90,000,000と資本金等10,000,000の合計100,000,000は、会計の純資産98,455,000に一時差異(1,200,000)と未払事業税(345,000)を加算した金額
  3. 別表五(二): 法人税等の納付状況を記録。前期確定分は充当金取崩し、中間分は損金経理、当期確定分は期末未納額として翌期に引継ぎ
  4. タックス・プルーフ: 法人税等2,695,700(負担率26.35%)を調整すると3,435,028(負担率33.58%=実効税率)となり、差額130円は許容範囲
  5. 3つの別表の整合性: 別表四の留保所得と別表五(一)の増減額が一致し、別表五(二)の納税充当金と別表五(一)の納税充当金が一致することで、すべての別表が整合的につながっている
ワンダマル株式会社の別表関連図