別表四と五

法人税等の還付と別表

この章では、中間納付した法人税等が還付されるケース、欠損金の繰越控除と繰戻し還付、そして所得税額控除について、別表四・別表五(一)・別表五(二)への記載方法を学びます。

Ch7では黒字(課税所得がプラス)を前提としましたが、ここでは赤字や減益の場合に中間納付額が戻ってくる処理を扱います。

1. 中間納付が全額還付となるケース

当期が大幅な赤字となり、中間分の法人税等が全額還付されるケースです。

(1) 前提条件

  • 前期確定分(1,400)は未払法人税等の取崩しで納付済み
  • 中間分(1,470)は損金経理で納付済み(法人税1,200、住民税70、事業税200)
  • 当期の課税所得: △5,430(赤字)

(2) 法人税等の計算

赤字なので法人税・事業税はゼロ。住民税は均等割(20)のみ。

税目年税額中間納付額還付(納付)額
法人税01,200△1,200(還付)
住民税2070△60(法人税割還付)、10(均等割納付)
事業税0200△200(還付)
合計201,470△1,460(還付)、10(納付)

(3) 会計処理

均等割以外の中間分(1,460)を未収還付法人税等に計上し、確定分の均等割(10)を未払法人税等に計上します。

未収還付法人税等   1,460 / 法人税、住民税及び事業税 1,460
法人税、住民税及び事業税 10 / 未払法人税等 10

損益計算書:

項目金額
税引前当期純損失△4,980
法人税、住民税及び事業税20
当期純損失△5,000

(4) 別表四の記載

中間納付額を「損金経理をした法人税」「損金経理をした住民税」で加算、未収還付法人税等を「仮払税金認定損」で減算、確定分の均等割(10)を「損金経理をした納税充当金」で加算します。

区分総額留保社外流出
当期欠損の額△5,000△5,000
加算: 損金経理をした法人税1,2001,200
加算: 損金経理をした住民税7070
加算: 損金経理をした納税充当金1010
減算: 納税充当金から支出した事業税等250250
減算: 仮払税金認定損1,4601,460
所得金額(欠損金額)△5,430△5,430

「仮払税金認定損」とは: 会計で資産計上した未収還付法人税等を、税務では「仮払税金」と呼びます。税務では仮払税金を資産と認めず、「認定損」として損金算入します。

(5) 別表五(一)の記載

会計で資産計上した未収還付法人税等(仮払税金)を、税務では純資産からマイナスします。一方、申告により還付される確定税額を「未収還付法人税」「未収還付住民税」として純資産に含めます。

区分期首期末
仮払税金△1,460△1,460
未収還付法人税1,2001,200
未収還付住民税6060
繰越損益金252,740252,740247,740247,740
納税充当金1,4001,4001010
未納法人税△1,000△2,200中間△1,2000
未納住民税△150△220中間△70, 確定△10△10

注意: 未収還付法人税と未収還付住民税を「増3」に記載すると、別表五(一)の太枠内の金額と別表四の留保所得がストレートに一致しません。太枠内の金額から未収還付法人税・未収還付住民税を差し引いた金額が留保所得と一致します。

(6) もう一つの記載方法(「しぶい」方法)

還付税額を未納法人税等の欄で「△印を二重線で取り消す」形で記載する方法もあります。この方法では別表五(一)の太枠内と別表四の留保所得が直接一致します。

(7) 別表五(二)の記載

当期確定分は「当期発生税額2」と「期末現在未納税額6」に△印を付けて記載します。△表示は申告により還付される確定税額(未収税額)を意味します。

事業税は現金主義で益金算入するため、期末の記載欄はありません。

(8) 翌期の還付時の処理

翌期に還付を受けたときの処理:

現預金 1,460 / 未収還付法人税等 1,460
未払法人税等 10 / 現預金 10

翌期の別表四:

区分総額留保社外流出
加算: 仮払税金還付額1,4601,460
減算: 法人税等の中間納付額及び過誤納に係る還付金額1,2601,260
所得金額200200

還付された仮払税金は「仮払税金還付額」で加算(益金算入)し、益金不算入の法人税(1,200)と住民税(60)の還付額を減算します。結果として、現金主義で益金算入される事業税の還付額(200)だけが翌期の課税所得に含まれます。

(9) タックス・プルーフ

項目金額税率
税引前当期純損失△4,980100.00%
法人税等20△0.40%
未払事業税の期中減少 450 x 30%+135
繰越欠損金の期中増加 5,430 x 30%△1,629
均等割△20
調整後△1,49430.00%

2. 中間納付の一部が還付となるケース

当期の課税所得は少額の黒字だが、中間納付額を下回るため一部が還付されるケースです。

(1) 前提条件

  • 前期確定分(1,400)は未払法人税等の取崩しで納付済み
  • 中間分(1,470)は損金経理で納付済み
  • 当期の課税所得: 1,000

(2) 法人税等の計算

税目年税額中間納付額還付額要納付額
法人税2501,2009500
住民税35704510(均等割のみ)
事業税502001500
合計3351,4701,14510

(3) 会計処理

未収還付法人税等 1,145 / 法人税、住民税及び事業税 1,145
法人税、住民税及び事業税 10 / 未払法人税等 10

損益計算書:

項目金額
税引前当期純利益1,450
法人税、住民税及び事業税335
当期純利益1,115

(4) 別表四の記載

区分総額留保社外流出
当期利益1,1151,115
加算: 損金経理をした法人税1,2001,200
加算: 損金経理をした住民税7070
加算: 損金経理をした納税充当金1010
減算: 納税充当金から支出した事業税等250250
減算: 仮払税金認定損1,1451,145
所得金額1,0001,000

(5) 別表五(一)の記載

全額還付のケースと同じ構造です。仮払税金△1,145を純資産からマイナスし、未収還付法人税950と未収還付住民税45を純資産に含めます。

(6) 翌期の還付時

全額還付のケースと同じ処理です。翌期に事業税の還付額(150)だけが課税所得に含まれます。

(7) タックス・プルーフ

項目金額税率
税引前当期純利益1,450100.00%
法人税等33523.10%
未払事業税の期中減少 400 x 30%+120
均等割△20
調整後43530.00%

3. 欠損金の繰越控除と繰戻し還付

(1) 2つの特例の基本

税務でマイナスの所得(赤字)を「欠損金」といいます。青色申告法人には2つの特例が認められています。

特例内容対象
繰越控除欠損金を翌期以後10年間繰り越して各年の所得から控除青色申告法人(大法人は所得の50%を限度)
繰戻し還付欠損金を前期の所得にさかのぼって法人税額の還付を請求青色申告の中小企業者等

繰戻し還付の計算式:

還付請求できる額 = 還付所得事業年度の法人税額 x (欠損事業年度の欠損金額 / 還付所得事業年度の所得金額)

重要: 繰戻し還付は法人税(地方法人税を含む)のみが対象です。住民税と事業税には適用されません。

(2) 住民税と事業税の扱い

税目繰戻し還付の扱い
法人税還付される
住民税還付されない。繰戻し還付を受けた法人税額を、翌10年間の法人税割の課税標準となる法人税額から控除
事業税還付されない。繰戻し還付をしなかったものとして、欠損金全額を翌10年間の所得割から繰越控除

(3) 事例: 黒字→赤字→黒字(3期)

新規設立の中小法人で、所得が 10,000 → △20,000 → 14,000 と推移する事例です。

第1期: 課税所得 10,000  → 法人税2,500、住民税170、事業税500 → 計3,170
第2期: 課税所得△20,000 → 欠損金10,000を繰戻し還付、残り10,000を第3期に繰越
第3期: 課税所得 14,000  → 繰越欠損金10,000を控除、法人税の課税所得は4,000

第1期(黒字)

会計処理:

法人税、住民税及び事業税 3,170 / 未払法人税等 3,170

別表四:

区分総額留保
当期利益6,8306,830
加算: 損金経理をした納税充当金3,1703,170
所得金額10,00010,000

別表五(一):

区分期首期末
繰越損益金6,8306,830
納税充当金3,1703,170
未納法人税確定△2,500△2,500
未納住民税確定△170△170
差引合計07,330

税務の期末利益積立金額 7,330 - 未払事業税 500 = 会計の繰越利益剰余金 6,830

タックス・プルーフ:

項目金額税率
税引前当期純利益10,000100.00%
法人税等3,17031.70%
未払事業税の増加 500 x 30%△150
均等割△20
調整後3,00030.00%

第2期(赤字: 繰戻し還付)

第1期確定分(3,170)は充当金取崩しで納付。中間分は仮決算で均等割(10)のみ損金経理。

法人税の還付請求額:

還付額 = 2,500 x (10,000 / 10,000) = 2,500

会計処理:

未払法人税等 3,170 / 現預金 3,170          ← 前期確定分支払
法人税、住民税及び事業税 10 / 現預金 10      ← 中間均等割
法人税、住民税及び事業税 10 / 未払法人税等 10 ← 当期確定分均等割
未収還付法人税等 2,500 / 法人税、住民税及び事業税 2,500 ← 繰戻し還付

損益計算書:

項目金額
税引前当期純損失△19,500
法人税、住民税及び事業税20
還付法人税等△2,500
当期純損失△17,020

別表四:

区分総額留保社外流出
当期欠損の額△17,020△17,020
加算: 損金経理をした住民税1010
加算: 損金経理をした納税充当金1010
減算: 納税充当金から支出した事業税等500500
減算: 仮払税金認定損2,5002,500
所得金額(欠損金額)△20,000△20,000

還付請求額(2,500)は「仮払税金認定損」で減算「留保2」します。法人税の還付額は益金不算入のためです。

別表五(一):

区分期首期末
仮払税金△2,500△2,500
繰越損益金6,8306,830△10,190△10,190
納税充当金3,1703,1701010
未納法人税△2,500△2,5000
未納住民税△170△180中間△10, 確定△10△10
差引合計7,330△12,690

税務の期末利益積立金額 △12,690 + 仮払税金 2,500 = 会計の繰越利益剰余金 △10,190

タックス・プルーフ:

項目金額税率
税引前当期純損失△19,500100.00%
法人税等△2,48012.72%
未払事業税の減少 500 x 30%+150
繰越欠損金(全体分)の増加 10,000 x 30%△3,000
繰越欠損金(地方税分)の増加 10,000 x 5%△500
均等割△20
調整後△5,85030.00%

解説: 繰越控除に回る欠損金(10,000)は法人税等すべてで減税効果があるため実効税率30%を適用。繰戻し還付に回る欠損金(10,000)は法人税の還付は即時だが地方税は将来の控除なので、地方税分5%(実効税率30% - 法人税率25%)のみを繰越欠損金として計上。

第3期(黒字: 繰越控除)

第2期の住民税均等割(10)は充当金取崩しで納付。法人税還付(2,500)を受領。

法人税の計算:

課税所得 14,000 - 繰越欠損金 10,000 = 4,000
法人税 = 4,000 x 25% = 1,000

住民税の計算:

法人税額 1,000 - 控除対象還付法人税額 1,000 = 0
法人税割 = 0 x 6% = 0
均等割 = 20
住民税合計 = 20
(控除対象還付法人税額の翌期繰越額: 2,500 - 1,000 = 1,500)

事業税の計算:

課税所得 14,000 - 繰越欠損金 20,000 = △6,000 → 事業税 = 0
(繰越欠損金の翌期繰越額: 20,000 - 14,000 = 6,000)

会計処理:

未払法人税等 10 / 現預金 10                 ← 第2期確定分均等割
現預金 2,500 / 未収還付法人税等 2,500       ← 繰戻し還付の受領
法人税、住民税及び事業税 1,020 / 未払法人税等 1,020 ← 第3期確定分

損益計算書:

項目金額
税引前当期純利益14,000
法人税、住民税及び事業税1,020
当期純利益12,980

別表四:

区分総額留保社外流出
当期利益12,98012,980
加算: 損金経理をした納税充当金1,0201,020
加算: 仮払税金消却不算入額2,5002,500
減算: 所得税額等及び欠損金の繰戻しによる還付金額等2,500※2,500
仮計14,00016,500
欠損金の当期控除額10,000※10,000
所得金額4,00016,500

繰戻し還付の受領額(2,500)は「仮払税金消却不算入額」で加算「留保2」し、「所得税額等及び欠損金の繰戻しによる還付金額等」で減算「※社外流出3」(課税外収入)。繰越欠損金(10,000)は「欠損金の当期控除額」で減算「※社外流出3」。

別表五(一):

区分期首期末
仮払税金△2,500△2,5000
繰越損益金△10,190△10,1902,7902,790
納税充当金10101,0201,020
未納法人税確定△1,000△1,000
未納住民税△10△10確定△20△20
差引合計△12,6902,790

第3期末は税務と会計の純資産に差異なし! 税務の期末利益積立金額 2,790 = 会計の繰越利益剰余金 2,790

タックス・プルーフ:

項目金額税率
税引前当期純利益14,000100.00%
法人税等1,0207.29%
繰越欠損金(全体分)の減少 10,000 x 30%+3,000
繰越欠損金(地方税分)の減少 4,000 x 5%+200
均等割△20
調整後4,20030.00%

4. 所得税額控除

(1) 利息から源泉徴収された所得税

受取利息から源泉徴収された所得税(復興特別所得税を含む)は、法人税額から税額控除できます。所得税と法人税が二重に課税されないよう精算するしくみです。

会計処理(普通預金に利息84,685が入金された場合):

普通預金 84,685 / 受取利息 100,000
法人税、住民税及び事業税 15,315

源泉所得税は法人税の前払いなので「法人税、住民税及び事業税」で仕訳します。

(2) 別表六(一)への記載

源泉所得税について税額控除を受ける場合、利息等の収入金額と所得税額の明細を別表六(一)に記載します。

区分収入金額所得税額控除を受ける所得税額
公社債及び預貯金の利子等100,00015,31515,315

(3) 所得税と別表四

税額控除を受ける所得税は損金不算入の税金なので、「法人税額から控除される所得税額」で加算「社外流出3」します。「社外流出」に記載するのは、所得税が源泉徴収される時点でお金が社外に流出しており、当期限りで課税関係が完了するためです。

区分総額留保社外流出
当期利益84,68584,685
仮計84,68584,685
法人税額から控除される所得税額15,315その他 15,315
所得金額100,00084,685

源泉所得税(15,315)を加算することで、課税所得は源泉税込みの利息(100,000)になります。

(4) 所得税と別表五(二)

源泉所得税は「その他(租税公課)」の「損金不算入」欄の「損金経理による納付5」に記載します。

(5) 「所得税額控除」を受けないと損

源泉所得税について、損金算入で終わらせることも可能ですが、損金不算入として税額控除を受ける方が有利です。

方法所得金額法人税等(30%)所得税額控除納付すべき法人税等
損金算入84,68525,405025,405
損金不算入(税額控除)100,00030,000△15,31514,685

税額控除を受ける方が10,720円有利です。

5. 受取配当金の所得税額控除

(1) 配当金の源泉所得税

配当金から源泉徴収された所得税も、法人税額から税額控除できます。

会計処理(上場会社から配当金795,800が入金された場合):

当座預金 795,800 / 受取配当金 1,000,000
法人税、住民税及び事業税 204,200

(注)令和5年10月1日以後、完全子法人株式等(持株割合100%)からの配当は源泉徴収不要となりました。この例は上場株式等(保有割合5%以下)からの配当で源泉所得税20.42%が控除されるケースです。

(2) 別表四の記載

源泉所得税(204,200)は「法人税額から控除される所得税額」で加算「社外流出3」。配当金(1,000,000)は保有割合に応じた益金不算入割合で減算「※社外流出3」。ここでは非支配目的株式等(保有割合5%以下)として20%が益金不算入と仮定します。

区分総額留保社外流出
当期利益795,800795,800
減算: 受取配当等の益金不算入額1,000,000※1,000,000
仮計△204,200795,800△1,000,000
法人税額から控除される所得税額204,200その他 204,200
所得金額0

持株会社の例: 完全子法人からの配当のみが収入の持株会社は、配当金が全額益金不算入、源泉所得税は全額還付となり、法人税等の課税はゼロになります。

6. 控除しきれない所得税の還付

源泉徴収された所得税が当期の法人税額から控除しきれない場合は、翌期に還付されます。

(1) 当期に未収計上する方法(望ましい方法)

当期の会計処理:

当座預金 795,800 / 受取配当金 1,000,000
未収還付法人税等 204,200

当期の別表四:

区分総額留保社外流出
当期利益1,000,0001,000,000
減算: 受取配当等の益金不算入額1,000,000※1,000,000
減算: 仮払税金認定損204,200204,200
仮計△204,200795,800△1,000,000
法人税額から控除される所得税額204,200その他 204,200
所得金額0

未収還付法人税等を「仮払税金認定損」で減算「留保2」します。

当期の別表五(一):

仮払税金(△204,200)を純資産からマイナスします。

翌期の別表四:

区分総額留保社外流出
加算: 仮払税金消却不算入額204,200204,200
減算: 所得税額等及び欠損金の繰戻しによる還付金額等204,200※204,200

仮払税金の消却を加算「留保2」し、還付金額を減算「※社外流出3」(課税外収入)とすることで、翌期の所得計算に影響しません。

(2) 翌期の還付時に雑収入で受け入れる方法

当期は会計処理なし。翌期に還付されたとき:

当座預金 204,200 / 雑収入 204,200

翌期の別表四で「所得税額等及び欠損金の繰戻しによる還付金額等」として減算「※社外流出3」するだけです。別表五(一)・五(二)への記載は不要で、より簡素な処理になります。

どちらが望ましいか: 企業会計基準では、重要性が乏しい場合を除き、(1)の未収計上する方法が望ましいとされています。

法人税等の還付フロー