別表四と五

別表四と別表五(一)の重要ポイント

この章では、個別の各別表(交際費の別表十五、寄附金の別表十四(二)、受取配当金の別表八(一)、租税公課の別表五(二))がどのように別表四と別表五(一)に転記されるかを見ていきます。「すべての税務調整は最終的に別表四と別表五(一)に帰結する」という構造が分かれば、法人税申告書の全体像がつかめます。

4-1. すべては別表四と別表五(一)に帰結する

当期限りの調整(社外流出)と翌期以後に引き継ぐ調整(留保)

別表四には「留保」欄と「社外流出」欄の2つの処分区分があります。この区分は、その税務調整が 当期限りで終わるか、翌期以後にも影響するか で決まります。

簿記3級でいえば、仕訳の相手科目がB/S(貸借対照表)項目かどうかで考えると分かりやすいです。

  • 社外流出 ... 翌期以後の所得には影響しない。当期だけで課税関係が完結する調整
  • 留保 ... 翌期以後の所得にも影響する。B/Sの資産や負債に差異が残り、将来のどこかで解消される調整

別表四「社外流出」にのみ転記される各別表

次の別表の調整は、当期限りで課税関係が終了するため、別表四の「社外流出」欄にのみ転記されます。別表五(一)への転記はありません。

別表内容
別表十五交際費等の損金不算入額
別表十四(二)寄附金の損金不算入額
別表八(一)受取配当等の益金不算入額
別表五(二)の一部延滞税・過怠税、税額控除の源泉所得税など
別表六(一)所得税額の控除
別表七(一)欠損金の損金算入
各別表が別表四・五(一)に転記される構造

別表四「留保」と別表五(一)の両方に転記される各別表

次の別表の調整は、翌期以後の所得にも影響するため、別表四「留保」と別表五(一)の 両方に 転記されます。

別表内容
別表五(二)の一部法人税・住民税の納付税額(納税充当金・未納法人税等と連動)
別表十一貸倒引当金の繰入限度超過額
別表十六減価償却の償却限度超過額
別表十三圧縮記帳(圧縮積立金の積立て・取崩し)

ポイントは、「留保」に記載された金額は そっくりそのまま 別表五(一)の「当期の増減」にも記載されるということです。別表四の「留保」と別表五(一)の太枠部分は同じ金額になります。

4-2. 交際費と別表十五

交際費課税とは何か

簿記3級では「費用を計上すれば、利益が減る」と学びました。しかし税務の世界では、交際費(得意先や仕入先への接待・贈答など)を費用計上しても、一定の限度額を超える部分は 損金(税務の経費)として認めない というルールがあります。

損金にならない = 利益に足し戻して所得を計算する = 法人税等が増える、ということです。この仕組みが「交際費課税」と呼ばれるものです。

大法人と中小法人の損金算入限度額

交際費の損金算入限度額は、会社の規模によって大きく異なります。

区分期末資本金額損金算入限度額
中小法人1億円以下年800万円(定額控除限度額)
大法人(100億円以下)1億円超100億円以下接待飲食費の50% のみ
大法人(100億円超)100億円超0円(全額損金不算入)

(注)資本金5億円以上の法人の完全子法人である中小法人は除かれます。

中小法人は年800万円まで交際費を損金算入できます。大法人のうち資本金等100億円以下の法人は接待飲食費の50%のみ損金算入可能で、100億円超の法人は全額損金不算入です。

また、得意先等との 飲食費 については除外基準があります。

  • 1人当たり 1万円以下 の飲食費(飲食年月日・相手方氏名・参加人数等を記録して保存)は、そもそも交際費等から除外されます(令和6年4月1日以後の支出分。それ以前は5,000円以下)
  • 1人当たり1万円を超える飲食費は、その 50% を損金算入できます(大法人(100億円以下)はこの50%ルールのみ、中小法人は800万円枠との選択適用)

数値例で見る別表十五の記載

次の事例で、中小法人と大法人の記載の違いを見てみましょう。

前提: 交際費 2,000,000円。うち得意先との飲食費で1人当たり1万円超が600,000円、1万円以下が500,000円。

ステップ1: 差引交際費等の額を計算する

交際費の支出額 2,000,000円から、1人当たり1万円以下の飲食費 500,000円を控除して、差引交際費等の額 = 1,500,000円 を求めます。

ステップ2: 損金算入限度額と損金不算入額を計算する

項目中小法人大法人
差引交際費等の額 (1)1,500,0001,500,000
飲食費の50%基準額 (2)300,000300,000
800万円定額控除 (3)1,500,000---
損金算入限度額 (4) = (2)か(3)の大きい方1,500,000300,000
損金不算入額 (1) - (4)01,200,000

中小法人は限度額1,500,000円 >= 差引交際費等の額1,500,000円なので損金不算入額はゼロです。別表四への転記はありません。

大法人は損金不算入額1,200,000円が発生するので、別表四で加算します。

ステップ3: 別表四への記載(大法人の場合)

交際費の損金不算入額は当期限りで課税関係が終了するため、加算「社外流出」 に記載します。

区分総額留保社外流出
当期利益又は当期欠損の額xxxxxx
加算: 交際費等の損金不算入額1,200,000その他 1,200,000
所得金額又は欠損金額xxx

交際費等の損金不算入額 1,200,000円が利益に加算され、「1,200,000 x 実効税率」に相当する法人税等の負担が増えることになります。

交際費の損金不算入が別表四「社外流出」に転記される流れ

4-3. 寄附金と別表十四(二)

寄附金の4つの区分

寄附金とは、見返りを期待しない贈り物のことです。金銭の贈与だけでなく、時価より低い価額での売却なども税務上は寄附金に含まれます。

法人税では、寄附金を次の4つに区分し、それぞれ損金算入の限度額が異なります。

区分損金算入限度額
(1) 国・地方公共団体への寄附金全額 が損金算入
(2) 指定寄附金(財務大臣が指定したもの)全額 が損金算入
(3) 特定公益増進法人等への寄附金限度額あり(下記計算式)
(4) その他の一般寄附金限度額あり(下記計算式)

限度額の計算式

簡単にいうと、所得が大きい会社・資本金が大きい会社ほど限度額が大きくなる仕組みです。

特定公益増進法人への限度額
= ( 所得金額 x 6.25/100 + 資本金等の額 x 3.75/1,000 ) x 1/2

一般寄附金の限度額
= ( 所得金額 x 2.5/100 + 資本金等の額 x 2.5/1,000 ) x 1/4

ここでいう「所得金額」は、別表四の「仮計」の金額に支出寄附金の額を加えた 寄附金支出前の所得金額 です。

「仮計」が固まった後に計算する理由

寄附金の限度額計算では「寄附金支出前の所得金額」を使います。そのため、他のすべての税務調整が終わって別表四の「仮計」が確定してから でないと計算できません。

もし寄附金の損金不算入額を計算した後に別の税務調整が追加され「仮計」が変わると、限度額を再計算しなければなりません。寄附金は最後に計算する、と覚えてください。

数値例で見る損金不算入額の計算

前提:

指定寄附金 150,000円、特定公益増進法人への寄附金 1,000,000円、一般寄附金 50,000円(合計 1,200,000円)

別表四の仮計(所得金額): 8,800,000円

資本金等の額: 50,000,000円

ステップ1: 限度額を計算する

特定公益増進法人への限度額
= ( (8,800,000 + 1,200,000) x 6.25/100 + 50,000,000 x 3.75/1,000 ) x 1/2
= ( 625,000 + 187,500 ) x 1/2
= 406,250円

一般寄附金の限度額
= ( (8,800,000 + 1,200,000) x 2.5/100 + 50,000,000 x 2.5/1,000 ) x 1/4
= ( 250,000 + 125,000 ) x 1/4
= 93,750円

ステップ2: 損金不算入額を計算する

  • 指定寄附金 150,000円 ... 全額が損金算入
  • 特定公益増進法人への限度超過額 = 1,000,000 - 406,250 = 593,750円 → 一般寄附金に繰り入れ
  • 一般寄附金の合計 = 50,000 + 593,750 = 643,750円
  • 一般寄附金の限度超過額 = 643,750 - 93,750 = 550,000円

損金不算入額は 550,000円 です。

特定公益増進法人の限度額を超えた分は一般寄附金扱いになるので、一般寄附金の限度額の中で吸収できるかどうかがポイントです。逆にいえば、一般寄附金の枠が余っていれば、特定公益増進法人の超過分をそこで救済できる仕組みです。

ステップ3: 別表四への記載

寄附金の損金不算入額も当期限りの調整なので、加算「社外流出」 に記載します。

区分総額留保社外流出
(仮計)8,800,0008,800,000
加算: 寄附金の損金不算入額550,000その他 550,000
所得金額又は欠損金額9,350,000

寄附金の損金不算入額は「仮計」の 後ろ に記載されます。これは、上記の計算で「仮計」を使っているためです。

寄附金の損金不算入が別表四「社外流出」に転記される流れ

4-4. 受取配当金と別表八(一)

益金不算入とは

法人が他の法人から受け取る配当金は、会計上は収益(受取配当金)です。しかし税務では、配当金の元となった利益はすでに配当元の法人で課税されているため、受け取った側でもう一度課税すると 二重課税 になってしまいます。

そこで法人税法は、受取配当金の全部または一部を 益金不算入(税務の収益に算入しない)とすることで、二重課税を排除しています。

株式等の保有割合と益金不算入割合

益金不算入の割合は、配当の元となる株式をどれだけ保有しているかで異なります。支配関係が深いほど不算入割合が高く(=課税されにくく)なります。

株式等の区分保有割合の目安益金不算入額
完全子法人株式等100%保有配当等の 全額
関連法人株式等1/3超配当等の全額(負債利子控除後)
その他株式等5%超 ~ 1/3以下配当等の額 x 50%
非支配目的株式等5%以下配当等の額 x 20%

たとえば完全子会社からの配当は全額が益金不算入ですが、株式市場で少しだけ保有している株式の配当は20%しか益金不算入になりません。

「社外流出」だが「※」を付ける理由

受取配当等の益金不算入は、当期限りで課税関係が終了する調整です。しかし、交際費や寄附金のように会社の外にお金が出ていく(社外流出)性質ではなく、むしろお金が入ってくる(収益)のに課税しないという性質です。

そこで、通常の「社外流出」と区別するために、「※」印を付けて「社外流出」欄に記載 します。この「※社外流出」は「課税外収入」と呼ばれます。

区分総額留保社外流出
減算: 受取配当等の益金不算入額500,000 500,000

「※」は「留保でも社外流出でもないが、当期限りで終わる特殊な項目」を意味します。受取配当金の益金不算入額は所得を減少させるため 減算 欄に記載します。

受取配当等の益金不算入が別表四「※社外流出」で減算される流れ

4-5. 租税公課と別表五(二)

損金になる税金とならない税金

簿記3級では、固定資産税や印紙税を「租税公課」として費用計上することを学びました。しかし法人税の世界では、すべての税金が損金(経費)になるわけではありません

区分具体例損金算入
損金算入される税金事業税、固定資産税、印紙税、自動車税などできる
損金不算入の税金法人税、住民税(法人税割・均等割)できない
損金不算入の附帯税延滞税、加算税、過怠税できない

法人税や住民税が損金にならない理由は、「法人税を計算するために法人税自身を控除する」と循環してしまうためです。

別表四への記載パターン

損金不算入の税金を損金経理(会計で費用処理)した場合は、別表四で加算する必要があります。ただし、どの処分欄に記載するかは項目によって異なります

項目処分理由
法人税・住民税(損金経理分)加算 「留保」B/Sの未納法人税等と連動するため
損金経理した納税充当金加算 「留保」B/Sの未払法人税等と連動するため
延滞税・過怠税加算 「社外流出」当期限りで終わる調整のため
税額控除の源泉所得税加算 「社外流出」当期限りで終わる調整のため
納税充当金から支出した事業税減算 「留保」税務で損金算入されるため

法人税と住民税が「留保」になるのは、これらが別表五(一)の納税充当金・未納法人税等の増減と連動するからです(詳しくは4-6で解説)。

数値例で見る租税公課の別表四記載

前提: 中間分の法人税700を損金経理で納付、中間分の住民税140を損金経理で納付、納税充当金1,140を引当て。前期確定分の事業税200を納税充当金の取崩しで納付。延滞税10を損金経理で納付。源泉所得税50を損金経理で納付(税額控除あり)。

区分総額留保社外流出
加算: 損金経理をした法人税700700
加算: 損金経理をした住民税140140
加算: 損金経理をした納税充当金1,1401,140
加算: 損金経理をした附帯税及び過怠税10その他 10
減算: 納税充当金から支出した事業税等200200
加算: 法人税額から控除される所得税額50その他 50

この例では、事業税200は納税充当金を取り崩して納付しているので減算「留保」200です。延滞税10は損金経理(P/Lで費用処理)して現金で納付しているので、損金不算入として加算「社外流出」10です。結果として、損金算入される事業税200だけが所得の減算として残ります。

租税公課の記載パターン一覧

別表五(二)の構造

別表五(二)「租税公課の納付状況等に関する明細書」は、法人税・住民税・事業税・その他の税金について、期首の未納額、当期の発生額、当期中の納付額、期末の未納額を一覧にまとめた表です。

納付の方法は3つあります。

納付方法意味
充当金取崩しによる納付前期末に引き当てた納税充当金(未払法人税等)を取り崩して納付
仮払経理による納付中間納付額を仮払金(資産)として処理して納付
損金経理による納付中間納付額を直接費用(法人税等)として処理して納付

別表五(二)の下部には「納税充当金の計算」欄があり、期首の納税充当金から取崩額を引き、繰入額(当期の引当額)を加算して期末の納税充当金を計算します。この金額は別表五(一)の納税充当金の行と一致します。

4-6. まとめ: 各別表から別表四・五(一)への転記パターン

この章で学んだ内容を、一覧表にまとめます。

別表税務調整の内容別表四の記載別表五(一)への転記
別表十五交際費の損金不算入加算「社外流出」なし
別表十四(二)寄附金の損金不算入加算「社外流出」(仮計の後)なし
別表八(一)受取配当の益金不算入減算「※社外流出」なし
別表五(二)法人税・住民税の損金不算入加算「留保」あり(納税充当金・未納法人税等)
別表五(二)延滞税・過怠税の損金不算入加算「社外流出」なし
別表五(二)事業税の損金算入減算「留保」あり(納税充当金の取崩し)
別表十一貸倒引当金の繰入限度超過加算「留保」あり(Ch5で解説)
別表十六減価償却の償却限度超過加算「留保」あり(Ch5で解説)
別表十三圧縮記帳減算「留保」あり(Ch5で解説)

原則:

  • 当期限りで終わる調整 → 社外流出 → 別表五(一)への転記なし
  • 翌期以後にも影響する調整 → 留保 → 別表五(一)にも転記

次のCh5では、「留保」に記載される代表的な項目(貸倒引当金、減価償却、圧縮記帳)の仕組みと、別表四の留保所得と別表五(一)の利益積立金額がどう連動するかを詳しく見ていきます。