別表四と五

税効果会計と別表

この章では、法人税等の税率構造、実効税率の計算方法、そして税効果会計が別表四・別表五(一)にどう反映されるかを学びます。簿記3級では「法人税、住民税及び事業税」を費用として計上する仕訳を学びましたが、ここではその裏側にある税率の仕組みと、会計と税務のズレ(差異)を調整する「税効果会計」の基本を理解しましょう。

1. 法人税等の税率

法人が納める「法人税等」は、大きく3つの税金から構成されています。簿記3級で学んだ「法人税、住民税及び事業税」の内訳です。

(1) 法人税と地方法人税(国税)

法人税は、会社の課税所得に対して課される国税です。

区分税率
法人税(原則)23.2%
中小法人の軽減税率(年所得800万円まで)15%
地方法人税基準法人税額 x 10.3%
  • 中小法人とは、資本金1億円以下の法人(ただし資本金5億円以上の法人の完全支配関係にある中小法人を除く)です。
  • 地方法人税は法人税とあわせて国に納付する国税です。法人税額に10.3%をかけて計算します。

例えば課税所得10,000千円の場合:

【大法人の場合】
法人税額 = 10,000千円 x 23.2% = 2,320千円
地方法人税額 = 2,320千円 x 10.3% = 238,960円 → 238,900円(百円未満切捨)

【中小法人の場合】
法人税額 = 8,000千円 x 15% + 2,000千円 x 23.2% = 1,664千円
地方法人税額 = 1,664千円 x 10.3% = 171,392円 → 171,300円

(2) 住民税(地方税)

法人住民税は都道府県と市町村に支払う地方税で、以下の2つから構成されます。

構成要素内容
法人税割法人税額を基準に一定税率で課税。標準税率:道府県民税1% + 市町村民税6% = 合計7%
均等割赤字でも必ず納付。資本金等の額・従業員数に応じて税額が決まる

均等割は利益がゼロでも(赤字でも)必ず発生する点が重要です。簿記3級で学んだ損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」には、この均等割も含まれています。

(3) 事業税と特別法人事業税

事業税は都道府県に支払う地方税です。中小法人と大法人で課税方式が異なります。

中小法人(資本金1億円以下)の事業税:所得割のみ

所得区分標準税率
年400万円以下3.5%
年400万円超800万円以下5.3%
年800万円超7%

加えて、標準税率で計算した事業税額の37%が「特別法人事業税」として課税されます。

大法人(資本金1億円超)の事業税:外形標準課税

大法人は所得割に加えて「付加価値割」(1.2%)と「資本割」(0.5%)が課税されます。所得割の税率は中小法人より低く(年800万超で1%)、特別法人事業税は260%です。

ポイント: 事業税(外形分以外)は、税務上、申告書を提出した日(支払日)に損金算入されます。これは法人税・住民税が損金不算入であることと大きく異なり、後で学ぶ実効税率の計算やタックス・プルーフで重要になります。

2. 実効税率の計算方法

(1) 表面税率と実効税率の違い

  • 表面税率: 法人税・地方法人税・住民税・事業税・特別法人事業税の各税率を単純に合計した税率
  • 実効税率: 事業税が損金算入されることを考慮した、所得に対する実質的な税負担率

(2) 中小法人の実効税率: 33.58%(令和8年3月31日以前開始事業年度)

: 令和8年4月1日以後開始事業年度からは防衛特別法人税が加わるため、実効税率は変わります。ここでは防衛特別法人税導入前の標準税率ベースで計算します。

表面税率の計算:

表面税率 = 法人税率 x (1 + 地方法人税率 + 住民税率) + 事業税率 + (事業税率 x 特別法人事業税率)
         = 23.2% x (1 + 10.3% + 7%) + 7% + (7% x 37%)
         = 36.8036%

実効税率の計算(事業税の損金算入を考慮):

実効税率 = 表面税率 / (1 + 事業税率 + 事業税率 x 特別法人事業税率)
         = 36.8036% / (1 + 7% + 7% x 37%)
         = 36.8036% / 1.0959
         = 33.58%

事業税は原則として納税申告書を提出した事業年度に損金算入されるため、事業税を支払うことで翌期の課税所得が減り、結果として法人税等の負担が減ります。この「事業税の損金算入効果」を考慮に入れたのが実効税率です。

(3) 大法人の実効税率: 29.74%

大法人の事業税所得割は標準税率1%、特別法人事業税率は260%と中小法人より低いため、実効税率は29.74%になります。外形標準課税分(付加価値割・資本割)は所得に連動しないため、実効税率の計算には含めません。

注意: 実効税率の計算では、中小法人の軽減税率(15%)や事業税の段階税率は考慮しません。実際の税負担率は軽減税率の適用等によりもう少し低くなります。

3. 税効果会計の基本: 一時差異と永久差異

(1) 税効果会計とは

税効果会計とは、税引前当期純利益と法人税等を合理的に対応させるための会計手法です。

簿記3級で学んだ損益計算書を思い出してください。税引前当期純利益から法人税等を差し引いて当期純利益を計算しますね。しかし、法人税等は「会計の利益」ではなく「税務の所得」をベースに計算されるため、税引前当期純利益と法人税等がうまく対応しないことがあります。税効果会計はこのズレを調整します。

重要: 税務では税効果会計の仕訳を一切認めません。別表四・五(一)ですべて取り消されます。

(2) 一時差異と永久差異

会計と税務の差異には2種類あります。

差異の種類説明別表四の記載場所具体例
一時差異将来いずれかの時点で解消される差異「留保2」減価償却超過額、引当金繰入超過額、未払事業税
永久差異永久に解消されない差異「社外流出3」交際費等の損金不算入、受取配当等の益金不算入

税効果会計の対象は一時差異等です。「一時差異等」には、通常の一時差異のほか、繰越欠損金や繰越可能な税額控除なども含まれます。一方、永久差異は対象外です。

たとえば、税務の償却限度額を超えて計上した減価償却費(減価償却超過額)は、将来その資産の耐用年数が経過する時点で解消されます。「将来の費用を会計的に先取りした結果、税金を前払いしている」というイメージです。

一方、交際費の損金不算入は永久に解消されません。交際費として支出したお金は、税務上いつまで経っても損金にならないからです。

(3) 一時差異に準じるもの

  • 欠損金の繰越控除: 将来の税金を減少させる効果があるため、一時差異に準じて税効果会計の対象
  • 未払事業税: 会計では発生時に未払計上しますが、税務では申告書提出時(支払日)に損金算入。この時期のズレも一時差異

4. 繰延税金資産・繰延税金負債

一時差異を「将来、課税所得を減らすか増やすか」で2つに分類します。

区分B/S科目意味具体例
将来減算一時差異繰延税金資産(投資その他の資産)将来の法人税等を減額させる=税金の前払い減価償却超過額、引当金繰入超過額、未払事業税
将来加算一時差異繰延税金負債(固定負債)将来の法人税等を増額させる=税金の後払い圧縮積立金、特別償却準備金

計算方法: 一時差異の残高 x 実効税率 = 繰延税金資産(または繰延税金負債)

具体例(実効税率30%と仮定):

一時差異項目期首残高期中増減期末残高税効果額
賞与引当金300+100400120
未払事業税300-10020060
減価償却超過額300-10020060
退職給付引当金400+200600180
合計420

この場合、B/Sの「投資その他の資産」に繰延税金資産420が計上されます。繰延税金資産と繰延税金負債は相殺のうえ純額で表示します。

注意: 繰延税金資産は、将来の課税所得で回収できる見込みがある部分のみ計上できます。将来の課税所得が見込めない場合、回収可能性がないとして繰延税金資産を取り崩す必要があります。

5. 税効果会計と別表四への記載

税効果会計で計上された「法人税等調整額」は、別表四で取り消されます。

損益計算書のイメージ(法人税等調整額が貸方残=費用のマイナスの場合):

税引前当期純利益          8,400
法人税、住民税及び事業税  3,150
法人税等調整額           △ 30  ← 費用のマイナス(一時差異の調整)
当期純利益               5,280

別表四では:

当期利益                 5,280
(加算)
  損金経理をした法人税    1,240  ← 留保
  損金経理をした住民税      140  ← 留保
  損金経理をした納税充当金 1,400  ← 留保
  交際費等の損金不算入    2,000  ← 社外流出
  賞与引当金繰入額          400  ← 留保
  退職給付引当金繰入額      200  ← 留保
(減算)
  減価償却超過額の認容      100  ← 留保
  納税充当金から支出した事業税 300 ← 留保
  賞与引当金認容            300  ← 留保
  法人税等調整額             30  ← 留保(★ここで取り消し)
所得金額                10,000

法人税等調整額は減算「留保2」で別表四に記載し、税務上は「なかったこと」にされます。法人税等を増額した法人税等調整額は加算「留保2」です。

ポイント: 税効果会計を適用してもしなくても、課税所得は原則として変わりません。税効果会計はあくまで会計上の手続きであり、税務の所得計算には影響しないのです。

6. 税効果会計と別表五(一)への記載

税効果会計で計上された繰延税金資産・繰延税金負債は、別表五(一)でも取り消されます。

  • 繰延税金資産: 税務では資産と認めず、別表五(一)で純資産からマイナス(△表示)
  • 繰延税金負債: 税務では負債と認めず、別表五(一)で純資産にプラス

例えば、繰延税金資産420の場合:

区分期首期末
繰延税金資産△390△30△420

税務は税効果会計を認めないため、会計で計上した繰延税金資産を「税務上の純資産から差し引く」という形で取り消しています。

7. タックス・プルーフ(Tax Proof)

(1) タックス・プルーフとは

タックス・プルーフとは、税引前当期純利益と法人税等が実効税率で対応しているかを検証する作業です。法人税申告書の作成において税務調整に誤りがないかを確認する重要な手続きです。

(2) 検証の考え方

税効果会計を適用している場合、一時差異に対する法人税等の額は「法人税等調整額」で適切に期間配分されています。しかし、永久差異に対する法人税等の差異は永久に解消されません。

そこで、以下の手順で検証します。

税引前当期純利益                        8,400  100.00%
法人税、住民税及び事業税     3,150
法人税等調整額             △  30
会計上の法人税等                        3,120   37.14%

永久差異による調整
  交際費の損金不算入 2,000 x 30%     △  600    7.14%

調整後                                  2,520   30.00% ← 実効税率と一致!

会計上の法人税等(3,120)から永久差異に対する法人税等(600)を差し引くと、2,520になります。これは税引前当期純利益(8,400)に実効税率30%をかけた金額と一致します。

結論: この単純な設例では、税効果会計を適用することで一時差異の調整が相殺され、永久差異のみを調整すれば実効税率と一致します。ただし実務では、評価性引当額、税率変更、住民税均等割、外形標準課税の所得非連動部分、税額控除など他の調整項目も生じます。

税効果会計と別表の関係