CF精算表ステップ学習
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Step 5. 設備投資(固定資産)

5-1. このStepで学ぶこと

Step 4で銀行から借りた資金を使って、クチヒゲ商事株式会社は内装設備を購入します。ここから固定資産のライフサイクル(取得 → 償却 → 売却)とキャッシュ・フロー計算書の関係を学びます。

追加される論点は3つです。

固定資産のフェーズとCF計算書への影響

Step 4までに作成手順5ステップを4回反復しているので、フレームワークは身についています。このStepでは間接法の最も重要な調整項目である「非資金損益項目の加算」と「売却損益の除外」に集中します。

5-2. 取引条件

クチヒゲ商事株式会社はX1期首に内装設備を2,400,000円で取得します。耐用年数は5年、残存価額ゼロの定額法で減価償却を行います。年間の減価償却費は480,000円です。

X4期首に、この設備を800,000円で売却します。売却時点の帳簿価額は960,000円(取得原価2,400,000円 − 減価償却累計額1,440,000円)であり、差額の160,000円が固定資産売却損となります。

5-3. フェーズ1 — 取得

仕訳

取得仕訳: 建物附属設備 2,400,000 / 現金預金 2,400,000(単位: 円)

CF影響

現金が2,400,000円流出しますが、損益計算書には影響しません。取得は資産計上であって費用ではないからです。

投資CFでの固定資産取得の表示

固定資産の取得は将来の営業活動のための投資であり、日常の営業取引とは性質が異なります。連結CF実務指針8項では、固定資産の取得による支出を投資活動に分類すると定めています。

CFWS更新

CFWSの投資CF列に「取得による支出 △2,400,000円」を記入します。この金額は取引モジュールから総額で転記します。もし未払金が発生している場合(たとえば設備代金の一部を後払いにした場合)、取得支出は「取得原価 − 未払金増加額」となる点に注意が必要です。取得原価の全額ではなく、実際に現金が流出した金額をキャッシュ・フロー計算書に記載するためです。

5-4. フェーズ2 — 減価償却

仕訳

減価償却仕訳: 減価償却費 480,000 / 減価償却累計額 480,000(毎期同額)

CF影響 — 間接法の核心

ここが間接法を理解するうえで最も重要なポイントです。

減価償却費の調整 — 非資金損益項目の加算

減価償却費は「現金が出ていかない費用」です。取得時にまとめて現金を支払い、その後は使用期間にわたって費用を配分する。費用は毎期損益計算書に計上されますが、現金は取得時にすでに出ています。

間接法のスタート地点は税引前利益です。税引前利益を計算する過程で、減価償却費480,000円はすでに差し引かれています。しかし現金は出ていません。だから差し引きすぎた分を足して元に戻します。お金が増えるわけではなく、損益計算書で引きすぎた分を元に戻しているだけです。

連結CF実務指針12項では、減価償却費を営業活動によるキャッシュ・フローの調整項目として加算すると定めています。

CFWS更新

CFWSの営業CF列に「減価償却費 +480,000円」を記入します。貸借対照表上は建物附属設備の簿価が毎期480,000円ずつ減少していきますが、現金の動きはゼロです。それでもCFWSの営業CF列には毎期+480,000円が現れます。これは「利益の中で引かれているけれど現金は動いていない分を戻す」という間接法の翻訳結果です。

5-5. フェーズ3 — 売却

仕訳

売却仕訳: 現金預金 800,000 + 減価償却累計額 1,440,000 + 固定資産売却損 160,000 / 建物附属設備 2,400,000

X4期首の売却時点で、帳簿価額は960,000円です(取得原価2,400,000円 − 累計償却1,440,000円)。売却価額800,000円との差額160,000円が売却損になります。

CF影響 — 売却収入と売却損益の除外

売却によるキャッシュ・フロー計算書への影響は2箇所に分かれます。

固定資産売却のCF計算書への反映

投資キャッシュ・フローには、実際に受け取った現金800,000円を記載します。帳簿価額や売却損益ではありません。

営業キャッシュ・フローの小計上には、売却損160,000円を加算して除外します。売却損は税引前利益を減らしていますが、これは「投資活動の結果」であり営業の実力ではないからです。売却益が出た場合は減算で除外します。連結CF実務指針12項がこの調整の根拠です。

CFWS更新

ここで重要なのは、1つの貸借対照表科目の増減がCFWSの複数の列に分解されるという点です。

建物附属設備の貸借対照表増減は、投資CF列の「取得支出」「売却収入」と、営業CF列の「減価償却費」「売却損益」に分解されます。check行でこれらの合計が貸借対照表増減と一致すること(差がゼロ)を確認すれば、振り分けが正しいとわかります。

X1期の例で見ると:

  • 建物附属設備の取得原価: 貸借対照表増減 +2,400,000円 → 投資CF「取得支出 △2,400,000円」
  • 減価償却累計額: 貸借対照表増減 +480,000円 → 営業CF「減価償却費 +480,000円」
  • check行: (+2,400) + (-2,400) = 0、(+480) + (-480) = 0 ... 整合OK

X4期の例を行単位・符号単位で分解すると次のようになります。

BS科目BS増減営業CF(小計上)投資CF対応関係
建物附属設備(取得原価)△2,400,000+160,000+800,000売却損→営業CF加算、売却収入→投資CF
減価償却累計額+1,440,000前期までの償却費で既にCF反映済み
差引(帳簿純額)△960,000+160,000+800,000check: △960,000 + 160,000 + 800,000 = 0

建物附属設備の取得原価△2,400,000円と減価償却累計額+1,440,000円を差し引くと、帳簿純額の減少△960,000円です。これが売却収入+800,000円(投資CF)と売却損+160,000円(営業CF)に分解され、合計するとゼロになります。

これがCF精算表の力です。貸借対照表増減をキャッシュ・フローの3区分に分解し、check行でクロスチェックする。1つの科目が複数の活動区分にまたがっていても、精算表なら整合性を担保できます。

5-6. CFWSの更新

ステップ(1) 年次推移表の確認

b_年次推移表 のExcelファイルを開いてください。建物附属設備と減価償却累計額がBSに、減価償却費がPLに追加されています。

b_年次推移表 -- Step 5
読み込み中...

ステップ(2) 取引モジュールの確認

a_取引モジュール のExcelファイルを開いてください。

a_取引モジュール -- Step 5
読み込み中...

ステップ(3) CFWSへの転記

c_CFWS のExcelファイルを開いてください。

c_CFWS -- Step 5 精算表
読み込み中...

CFWSを開いたら、上半分の精算表エリアを見てください。

建物附属設備の行を見ましょう。BS増減が「有形固定資産の取得による支出」列と「減価償却費」列に分解されています。1つのBS科目が複数のCF列にまたがるパターンです。check列ゼロ。

下半分のCF計算書エリアでは、精算表の列合計がCF計算書の各行に集約されています。

  • 税引前当期純利益 △275,000
  • 減価償却費 +275,000 — 調整1: 非資金損益項目を加算
  • 小計 0
  • 営業CF 0
  • 有形固定資産の取得による支出 △1,900,000
  • 投資CF △1,900,000
  • 株式の発行による収入 +3,000,000
  • 財務CF +3,000,000

期末現金残高は1,100,000となり、BS上の普通預金と一致します。最終行のcheck列がゼロであれば完成です。

Step 5のまとめ

このステップで学んだのは、間接法の核心である2つの調整です。

第一に、非資金損益項目(減価償却費)の加算。現金が出ていかない費用を税引前利益に足して元に戻す。

減価償却費の調整

第二に、売却損益の除外。投資活動の結果を営業CFから取り除き、投資CFに売却収入を記載する。

固定資産売却のCF反映